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その後、役目は終わったとばかりに棚橋さんは帰っていった。私は佐知を捕まえてどうしても気になったことを聞いてみた。
「佐知、なんでここに来たの? 今台湾じゃないの? あと、どうして棚橋さんを連れてきたの? なんで棚橋さん急に態度変わってたの?」
矢継ぎ早に質問を繰り出す私に落ち着けと言わんばかりに私の腕を掴む。
「優希乃さん、ちゃんと順を追って説明しますから。まずは何でここに私がいるかですけど、優希乃さんに会いに来たんです。次の質問の答えともつながるんですけど、今度台湾で日本の文化を紹介するイベントやるんです。優希乃さん海外でもそういうイベント成功させてるじゃないですか。だから協力をお願いできないかと思って。これ、副社長の提案です。私達が組んだらいい仕事できると思いませんか?」
目をキラキラ輝かせながら話す佐知に圧倒されてしまう。だけど、確かに面白そうだし、魅力的な仕事だった。何より副社長が私の仕事を知っていてくれて、評価してくれることが嬉しかった。スケジュール次第ではすぐにでも返事したいくらいだ。
「後日打合せの時間取らせてくださいね。で、今ので2つの質問に答えたので3つ目ですけど……今回私が帰国するタイミングで大貴も帰国するって聞いたんで、大貴に連絡取ってみたんです。そうしたら、母親と愛理ちゃんが未だに優希乃さんのこと許せないって言ってることに悩んでるって聞いて。
美緒、今婚約してるんです。しかも親が決めた相手と。最初は嫌々会いに行ったんですけど、会ってみたら見た目はタイプだし優しい人でがっつり美緒の心掴まれたんです。親の決めた相手なんてロクな人じゃないっていうのは先入観でしかなくて、結婚相手に何の不満もない人だったんですよ」
彼女の我儘で散々苦しめられてきた結果がそれ? と呆気にとられてしまった。でも、彼女が今幸せでいるのであれば良かった。
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