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「ごめーん、ちょっと飲みすぎちゃった」
ソファに倒れ込んだ私を大貴くんは優しく起こしてくれた。
「今日は色々と大変な1日だったしね。でも心配していた問題も優希乃さんが解決してくれて本当に嬉しかった」
大貴くんは隣に座ると私の体をギュッと抱きしめてくれた。
「大貴くんが佐知と棚橋さんを呼んでくれたからだよ。私は何もしてない」
「そんなことないよ。優希乃さんが父さんとの距離を詰めてくれたから母さんと愛理もすぐに受け入れてくれたんだ。母さんは昔から父さんの言うことには忠実に従う人だから。優希乃さんが父さんと良い関係築いてくれなかったらあんなにすぐ態度変わらなかったと思う。あれは完全な想定外。やっぱり優希乃さんはすごいよね」
大貴くんに褒められると照れくさくなってしまい、ついついいつもの癖が出てしまう。
「あれは柿谷さんの作品のお陰だよ。私はそのサポートしかしてないのに、あんなに大きなお仕事に繋がった。私自身は全然すごいことなんてしてないんだよ」
大貴くんは、またかと呆れ顔になる。私の顔を自分の方に向けて、しっかりと私の目を見る。
「優希乃さんのそういうところは変わらないんだね。作品がすごくてもちゃんとアピールできないと作品は世にでない。柿谷さんが優希乃さんに感謝してるって何かの記事で読んだよ。佐知だって、優希乃さんだからわざわざ日本に帰ってまで一緒に仕事したいって話持ちかけてきたんでしょ。もっと自信持ちなよ」
あまりにも至近距離で見つめられてしまうので流石に恥ずかしくなってしまった。話を逸らすように別の話題を探す。
「そ、そう言えば、今日マッテオさんが“Tesoro”って言ってたでしょ。あれって宝物、って意味なのよね。さっきマキさんも宝物って言ってた。イタリアでは普通に使うものなの?」
私の問いかけに、大貴くんは驚いた表情を浮かべた後、少し悲しそうに口を開く。
「優希乃さん、僕最近雑誌のインタビューが載ったって話したじゃない。あれって見てくれてないの?」
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