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『記者:楽しさもあるけれどそれ以上に苦労や努力をしている姿を見せていただきました。そんな大変なイタリアの修行生活でも、いつも笑顔を絶やしていないと聞きました。辛いときにも出せる笑顔の源はなんですか?』
『髙山:そうですね……彼女の存在ですかね。今は日本とイタリアで離れ離れですけど、毎日電話やメールで励まされています。こっちで納得いくまで頑張って、成長した姿を見せたい。その思いがある限り、どんなに落ち込んでも上を向ける、その力の源になるんです。彼女は僕の大切な宝物ですから』
(たたた、宝物? 私が?)
だからみんな宝物、って言葉使ってたのか。なんだか恥ずかしさもあるけど、私のことをこんなに堂々と愛情込めて話してくれた嬉しさが胸の奥から込み上げてきた。
「優希乃さん、記事最後まで読んだ? ……って、え? どうしたの?」
大貴くんが戻ってきた時、私は雑誌を抱きしめながら大粒の涙を流していた。大貴くんには見られたくなかったけど、止められなかった。
「ごめん、嬉しくて。私のことこんなふうに言ってくれるの。あと、信用してないわけじゃないけど不安になってた自分が申し訳なくて」
もう雑誌は涙でグショグショだった。保存用にこの雑誌追加で買わなきゃ。そんな事を考えていると、大貴くんは私の体をキツく抱きしめた。
「分かったでしょ。僕は何より優希乃さんが大切なんだ。忘れないで。……1人で勝手に不安になったこと怒りたかったのに、想像以上の可愛い反応見せてくれたからこれでチャラにするね」
そう言ってまたキスの雨が降り注いだ。そうして大貴くんは、家にいる間はずっと私にくっついていた。両思いになってから初めての2人で過ごすゆっくりとした時間だし、明後日になればまた離れ離れになるのだから仕方ないかもだけど、ドキドキしすぎて全然落ち着く時間とはならなかった。
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