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02.望んでいない結末
2日後、私は何とか仕上げて期日内に提出した資料を手に会議室にいた。これから企画書の発表会が始まる。会議室には審査をする上層部のメンバーが7人と、オブザーバーとして推薦者の課長達、それとコンペの参加者が私含め4人いる。コンペの参加者は若手メンバーで集められたとはいえ自分が一番年下のようでやはり気後れしてしまう。
だけど優勝者は決まっている。どうせ自分が選ばれることはないんだ。緊張を和らげるために心の中で何度もつぶやく。これは経験、経験なんだ……
まずは髙山さんの発表からだった。髙山さんは白百合地区の高給住宅地かつ、私立の学校への進学率の高さから、白と黒を基調に落ち着いた雰囲気のインテリアでまとめ上げていた。『幼稚園にも、高級感を』それが髙山さんのコンセプトだった。
(やっぱり髙山さんの説明は分かりやすいし聞きやすいな……)
高山さんの発表はいつも通り自信に満ち溢れていて、最初から決まっていなくても髙山さんが選ばれるのは当然だろうと思ってしまうほどだった。
それから2人発表が続き、いよいよ自分の番。私は室内が白一色のシンプルなデザインを提案した。ただコンセプトは髙山さんとは違い、部屋全体をスクリーンにして海や森、や夜空など様々な映像を映し出すことで都会でも自然に興味を持ってもらえるような環境作りができるインテリアを提案した。
資料を読み終えるまでは何の問題もなかった。あとは質疑応答だけだったのだけれど、ここで想定外の意見が飛んできた。
「部屋に投影する映像もしくは投影イメージはもう出来てるか? サンプルだけでもいいんだけど、それが無いとちょっと提案としては弱いんだよな」
「あ、まだ今の段階ではそこまでは……」
想定していなかった質問に狼狽える私にさらに意見があがる。
「部屋全体に映像を投影するとなると専用に作ってもらう必要があると思うけど、作成業者は決まってないのか? もしくは候補のリストでもいいんだけど」
(やばい……そこまでちゃんと調べてなかった)
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