引っ越し先を求めて

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引っ越し先を求めて

 転職先より先に新しい住まいが必要だ。だが引っ越し先が決まらない。  決まらないまま不安な日々だけが過ぎていく。私は焦っていた。  私には他の非正規雇用で働く同僚達と違って実家というものがない。  十六歳の時に家族と呼べる人は死んで誰もいない私は、天涯孤独って奴。  その後はほぼ他人と同等の「超」が付く遠縁に厄介になったけど、やはり居心地が悪くて渋々という空気に囲まれた針の(むしろ)の中で、十八になるまでだと、我慢ガマンの日を過ごし。高校卒業と共に即出て行った。    私バカだから計画性ってのが足りないのかなぁ。先見の明ってやつも。  行き当たりばったりの人生。不器用だし手に職もなかなか難しい。  とにかく帰れる家なんかないのだから、まずは雨風しのげる寝床が必要だ。  少ないけどちょっとした小さな家具や細々とした荷物だってある。  貯金は…ないに等しく、実にささやか~なものだった。哀しい事に。残業あ当たり前の日々をあんなにしたのになぜだろう。  社畜ってやつの影響か、体調に表れた数々の謎の症状は、結果的に大した発見もないバカ高い検査費用に「疲労とストレスでしょう」の一言で済ませられて適当な薬を処方されるだけの医療費と交通費。そのストレス発散とばかりに衝動的に浪費してしまう遊興費(カラオケ代)、服飾費に過剰な食費。ケース買いの栄養ドリンク剤(後に効かなくなった)に…あと何だっけ?家賃だ!これ大事!  会社の寮とはいっても普通のマンションと変わらない住宅手当のない家賃と光熱費。貯蓄なんて出来なかった。自己責任て言われりゃぐうの音も出ないけどさ。借金がないだけまだマシである。  こりゃあアレか。ネットカフェに避難か?荷物どうしたらいいんだろう。  そんな風に考えを巡らせていると、寮ではなく普通のマンションで一人暮らしをしているという同僚が「短い期間なら」と同居を承諾してくれた。  これは有難いことだった。大きな荷物も同僚の友達の所に一時的に置かせてくれる事になった。  とはいえ、一日も早くちゃんと引っ越し先(安定した寝床)と仕事を見つけねばならない。残り二週間というのはあっという間に過ぎる。  あと二日という時。その同僚が吉報を持って来た。  「ねぇ、シェアハウスの入居者を探してるって話を聞いてきたんだけど。それもけっこう広いらしいのよ。どうかな?古い家だけどまぁ、(おもむき)のある古民家っていうの?そういうのって結構いい感じじゃない?」  聞けば家賃も破格。()だ見ていないけど古かろうがとにかく屋根のある下で寝られる。家具や本や、お気に入りの枕やら毛布も持ち込んで眠れる。  シェアする相手は気になるけど、仕事を確保してどうにかするまで、暫定(ざんてい)としてでもいいからなんとかしなくてはならないのだ。  捨てる神あれば拾う神あり、とはこの事か。  私はその話に飛びついた。  その先にどんなことが待っているかもわからなかったけど、迷ってる暇なんかない。タイムリミットはすぐ目の前。そう思って即断即決した。  が。  まさかガイコツと同居生活するなんて、誰が想像したろうか。  なんていうのだろうか、つまりガイコツシェアハウス?  ちなみにそのガイコツはちゃんと生きている。  ちゃんと会話出来て、喜怒哀楽もあって。普通の人と大して変わらない。  姿がガイコツってだけなんだけどさ。そりゃ私も一皮()けばガイコツだけど。  慣れるまで、結構時間がかかった。
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