不思議な生活の始まり

1/1
前へ
/12ページ
次へ

不思議な生活の始まり

 小夜子ちゃんが素の正体で現したのが三次審査なのかというと、それは序章で、本編はこれからの同居生活なんだという。  んー?私は混乱しっぱなし。  「ごめんごめん、まぁあんたも色々あったらしいって聞いてるし、引っ越し初日で疲れてるっしょ、今日はとにかく休んで。ぐっすり寝てね~。」  眠れると思うのかこの尋常じゃない状況で。  そう思ったけど、私は気を失うように翌日昼近くまで眠ってしまった。  「あの~大家さん…」  「なぁに?」  あれは夢だったんだろうかと思いながら、私は最初の家賃を渡しつつ(敷金・礼金なしってのも飛びついた理由のひとつだ)、小夜子ちゃんの正体について聞いてみたら、意外な言葉が帰って来た。  「あらぁもうバレたのねー。まぁ、古い家だし何があっても不思議でもないかなっていうか。特に害があるわけじゃないし、むしろ私的には座敷童みたいなもんだと思ってる。」  座敷童とガイコツって。全然違うような気がするんですけど。  さらに驚愕の爆弾発言。  「ついでに言うと、うちの旦那もガイコツなの。だから見慣れてるんだー。」  なんですと??  「なぁんちゃって。キャハハ。冗談よー。」  大家さん…この人も変な人だ。もしかして小夜子ちゃんも冗談なんだろうか。  コレはあれか?「何があってもおかしくない」に柔軟に対応できるテストみたいなの?それが入居審査なのか?  「再就職先探すのも焦ってるみたいだけど。慌てて変なブラックに飛び込むより、まず疲れを癒して体調整えて、じっくり考えてもいいと思うよ。家賃はツケにしてもいいから~。」  「え。なんでそんなお優しい…」  「あんた顔色悪いもん。」  それは尋常ならざる状況に遭遇したせいでは。  「事情は聴いてる。感覚も麻痺してたんじゃないかな。ブラックで社畜で非正規雇用だったんでしょ。こっちもガイコツがまたひとり増えられてもねぇ。」  「麻痺?」  社畜とかブラックとか、疲労の自覚はあったけど。  「でも、家賃とかちゃんと払わなくちゃ。ツケなんて借金と同じだし、ちゃんとお支払いします。お安くして頂いてますし申し訳ないです。」    「出たよー。ここにも申し訳ない病~。」  その声は小夜子ちゃんだった。夢じゃなかった、あのガイコツ姿。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加