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場所は変わって職員室前。理事長は不在だとかで、秘書さんから軽く校舎の説明を受けてすぐこの職員室前にやってきた。
明海先輩はと言うと、職員室に案内を終えてすぐに踵を返して帰ってしまった。これ以上仕事したくないので!という捨て台詞をあんなに綺麗な顔で言う人は初めてかもしれない。
「うおっ!?もう来てたのか?!…というか、明海がさっきここにいなかったか?また仕事サボって寮に帰ったのか…ん?いや、あいつが同室者だったか?んん…??」
教師と思しき人物が出てくる。ピアスや少し緩んだネクタイが少しチャラい雰囲気を漂わせているが、困ったような笑みを浮かべるその顔は中々……中々にイケメン、かっこいい!
「近衛 豊久です。」
豊久が自己紹介をして会釈をする、それに続くように僕も頭を下げた。挨拶は大事。
「綾小路 吉春です。よろしくお願いします」
「あっおう!転入生の2人だな?反応が遅れてすまんな、俺は1年学年主任の桜日 正義だ。とりあえず教室の案内するな!」
桜日先生の後を着いていき、これまた豪華な教室に着く。教室は職員室から程よく近いところにあり、豊久は3組、僕は2組だ。
1組と4組は職員室がある階では無いらしく、僕らへの配慮かと思って聞いてみればお坊ちゃまの多い学園ともなるとまた一味違った問題児が多いのだとまたもや困ったような笑みで返される。この人も苦労しているんだろう。大人だ……
「じゃあ、ついでだから寮まで案内してやるよ。」
くるりと振り返った桜日先生が、今度はいたずらっぽい顔で微笑む。
「俺も仕事を正当な理由でサボれるし、win-winだろ?」
仕事量は変わんねぇけどな!とまた困ったような顔で笑うので、尊敬半分、ほんとに親切か?という気持ち半分……
信じきれずにいると、僕と豊久の頭に桜日先生がぽんと手をのせる。
「ジョーダンだって、そんな疑う顔すんなよ〜」
わしゃわしゃと髪を撫でられて、髪型が崩れてしまった。やわく手をのけながら髪の毛を手で整える。豊久は大丈夫かと見てみれば、顔がクシャクシャになっていた。……そこまで髪命だったっけ、豊久
「おっと…すまんすまん、つい…子供好きだから俺……まぁ、俺は普通の教師だから存分に頼れよ!頼る教師は選べ!いやまぁ、教師以外もだ!いいな?」
僕と豊久の様子に気づいた桜日先生が両手を合わせて謝罪をしつつ、注意喚起をする。まるで親みたいで少し親しみを覚えた。
「なんでですか?」
「…ほんとに聞きたいのか?」
「えっ、はい…」
不思議に思ったのか訊ねた豊久に、桜日先生はうーん!あー……うーん!!と頭を抱えて悩みながら、改めて口を開く
「…同性愛に偏見とかは、無いな?」
「無いです」
「ないけど自分で想像したら吐きます」
「この学園が同性愛者両性愛者でいっぱいなのも聞いたな!?」
「ききました」
「明海先輩だるそうだったよね」
桜日先生は、明海から聞いたのかよ…となんとも言えない顔をしていた。あの人何したんだろう。
「かなりこの学園は恋愛面に対して緩くて……生徒に手を出す教師がまかり通ってるって話だ。教育委員会とかに行ったらさすがに免職だけど…まぁ、教師もここ出身とか金持ちだとかが多いからな?…言うとアレなんだが、教師だけじゃなくて生徒からも急の弱い生徒は狙われやすいから……」
不意に二人の視線が僕に向く。ちょっと、いやかなり失礼じゃないか?怒るよ
「吉春、即刻スタンガン持ち歩いて!!!ギリギリ銃刀法違反じゃないから!!」
「銃刀法違反ギリギリをせめるのやめよ??」
「護身用で実際に持ち歩いてる生徒はいるぞ、ギリギリ銃刀法違反じゃないから。」
えぇ…と呟くと豊久とハモる。おい、僕に持たせようとしてたじゃん。
「2人とも、誰も信用しない、気安く優しくしない、迂闊に2人きりにならない、役職持ちに近づかない…っていうのを最低限守れよ、何かあっても権力で揉み消されるからな!!綾小路だけじゃなくて、近衛だって軽率に狙われるんだぞ、転校生は敵対視や理想を押し付けられたりしやすい!!」
うんうん、と頷く。が、豊久からの反応がなく、どんな顔をしているのだとちらりと豊久を横目で見ると、今すぐ戻してしまうのではないかというほど顔色が悪かった。バカ、なんで無理だとわかって想像するの!!
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