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「じゃあ…僕もう降りるけど、大丈夫?間に合わなかったらビニールに吐いてよ、穴はあいてないはずだから…」
豊久は口元を押さえつつも力無く頷く。やっぱり8階まで着いていこうかと足を止めたが、あっという間にエレベーターは去ってしまった。
はた、とまた豊久の世話を焼きすぎていることに気づく。中学ではクラスメイトはおろか先輩や後輩、教師にまで豊久のことを聞かれていたのだった。
人脈があるのは結構だが、また こ、これ…豊久くんに渡して欲しいの…♡という仲介役だけは避けたい、ここは男子校だけども…無きにしも非ずだ、多分。
混雑した思考を首を振って流す。学校は明後日からだし、さっさと部屋に行って落ち着こう。
「えっと…ここだ。」
少し小走りで廊下を進むと、315号室が見えてきた。高良先生から渡された鍵でゆっくりと扉をあける。
「お邪魔しま〜す…」
玄関には低めの綺麗な木製の靴箱、その上には綺麗に観葉植物が置かれており、無駄がなかった。靴はポツンとスニーカーが揃えて置かれていて、他の靴はしまわれていそうだ。
「ひらっはい」
そして今…黒髪に青い瞳のよく似合う美少年がなぜか、今この玄関でカップラーメン…いや、正確にはブ𓏸メンを啜りながら立っている。ドアノブを握る手をそのまま使って扉を閉めた。
「??????」
まて、見間違えかもしれない。案内を早々に切り上げそそくさと寮に帰ってわざわざカップラーメンを作るような先輩は僕の知り合いに居ない。
深呼吸をしてもう一度扉を開けるとそこには黒髪に青い瞳のよく似合う美少年が(以下略)。夢じゃなかった…っ!!!
「ひほひふるほははひははひへふは」
「…あの、もう1回扉閉めていいですか??」
現実から目を背けたくてそのまま口に出すとグイグイと近づかれて扉に足を挟まれる。逃げ場がないが…?
奇行に走っている美少年こと…明海先輩の前まで歩いて寄ると、明海先輩は1度麺をごくりの飲み飲んでから口を開いた
「ようこそ寮へ」
あっけらかんとそう言って、なんでもない顔をしながら明海先輩は再び麺を啜り始めた。
「へははひはへふほへはふはひひはふへ」
何を言ってるか分からない明海先輩の顔を唖然としながら眺めていると、グイッと袖を引かれてハッとする。ラーメン食べながら袖引っ張るとか、器用だな…
「お行儀悪いので飲み込んでから喋ってください…食べ終わるの待ちますよ?」
少し眉間に皺を寄せたあと、明海先輩はゴクリと大きく飲み込んで話し出した。
「はひゃふひほほほほははへはひほへ!!」
そんな状況でキリッとされてもなと思っていると、ブタ〇ンを食べている明海先輩のお腹が大きく音を立てた。
「…その量で足りるんですか…?ブタメ〇って駄菓子だった気がするんですが。」
僕の言葉に、すら〜っと右に視線を泳がせながら明海先輩が答える。
「今朝卵を買ったのでご飯をチンすれば空腹はしのげます。みんなだいすきTKG……」
「つまり足りないんですね???」
「………まず荷解きを…、」
「あ!と!で!大丈夫です。」
詰め寄って玄関に持っていた荷物を置くと、明海先輩は観念したように一気に〇タメンをかきこんだ。
「これが噂のおかん属性か…」
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