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「明海先輩、美味しいですか?自信ないんですけど……」
少し不安に思い、ソファーに腰掛けながら尋ねる
「久方ぶりの人間の食事……!!」
手を合わせながら嬉しそうに食事を頬張る先輩は弟を彷彿とさせる。
「〇タメンも人間の食事ですよ、先輩。」
少なくとも、食べれる代物ではある。
「分かってますよ、でもお腹は膨れないから…」
少し不貞腐れるような顔をしながら明海先輩は僕の料理を頬張っていく。
「先輩ってお金ないんですか……?」
失礼だとは分かりつつも尋ねると、明海先輩は箸を止めてため息を着いた。
「自炊ができません。レンジも解凍ぐらいしか使えない……ご飯も炊けない…!!!くっ!!」
悔しそうに明海先輩が箸を持った手を握る。
「何をどうしたらそんなに生きていけなくなるんですか?!?!」
思わず声を上げて驚いてしまうと、先程と同じようにぷくっと頬を膨らませて怒ってしまった。
「失敬な、名家ゆえの短所です。前世では使えました!!」
「そんなにですか…?」
僕と明海先輩の間に、なんとも言えない空気が流れる。その間に、さっさと明海先輩は食べ終えてしまった。ちょっと言い過ぎたかも、と思って少し俯いてしまう。
「……ん?前世ってなんですか?」
違和感を感じて顔を上げると、並べてあった皿は綺麗に片付けられており、明海先輩がいない。キョロキョロと辺りを見回そうとすると、すぐ左どなりに明海先輩がいて、情けなくも声を上げて驚く。
「それは後で説明するので……」
目が合って、僕の腕にあけみ先輩の手が触れる。サラッと寝転がらせられつつも、腕から手は離れそうにない。何も言わない先輩の様子をじっくりと観察する。
少し黒い髪は右側で緩くまとめられており、髪の艶も猫のように綺麗だ。つり上がった目にはめ込まれた瞳は青く印象的で…なんというか、造形美だな…
「…美少女…??」
思わずぽつりと呟くと、おでこに軽いデコピンを食らわされる。痛い。
「美少年の方が嬉しいですね…ま、とにかく……」
にっこりと浮かべているその顔はまさに黒くて身震いがする。僕、分かるよ!明海先輩が何持ってるか分かるよ!!!
「あけっ…明海先輩!?」
弟とおそろいの付けようかって1回提案されたことあるもん!!!
「僕の後輩の印でも刻みましょうか!!」
ピッ、ピアッサーだーッ!!
「待って!せんぱい、普通開けるところ冷やしてから開けるんdうっ!!!!」
見事にぶすりと行かれてしまった、本当に痛い。痛くないって聞いていたのに痛い。
「開ける前は冷やさない方がいいって聞きました!…これって開けた後に冷やしても効果ありますかね」
真剣な顔はどこかアホっぽくて、本当に一瞬の痛みだったはずなのに涙が出そうになる。
「前者は知らなかったですが後者は出血のリスクが増すらひいです…うひぃ、じんわりいたい…」
押さえようとすると、どこからともなく鏡を出される。シンプルなファーストピアスはなんの問題もなくついていた。位置も完璧とか、ムカつく……
「…まぁ、用意してなかったのでどっちにせよ冷やせませんよ、観念頼もう」
その言葉に、今度こそ泣いてしまうかと思った。
「事前準備が浅すぎるよぉぉ……!」
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