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 一メートルにも満たない程度であったが、あの大きさでも図鑑には載っていない。  あれを目にした昔の人々が、(ぬし)として神格化したのだと思えば、それは仕方のないこととも思えた。  あの事件後、巨大蜘蛛出現のニュースは瞬く間に噂となり、村は村外からやって来た多くの報道陣で溢れ返った。  怖いもの見たさの野次馬たちが森に踏み入り、ユーチューバーによる土蜘蛛捜しが行われ、懸賞金まで出す金持ちも現れたが、その姿は認められることはなかった。  全国放送で特番を組まれたこともあったが、存在する証拠は何一つ見つからず、結局蜘蛛神信仰のある村での集団幻視だったのではないかという、精神学者の一言で話が括られた。  あれほどハッキリみんなで見たのに幻視扱いとは、と目撃者は皆憤慨したが、騒ぎが続くのを良しとしない民も多く、事態はそのまま収束に向かって行った。  太一にとって気がかりだったのは、あの時の灯里の行動だった。  皆が恐れて畏縮していた最中、灯里だけが――――………。
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