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3-21
ゆっくりと睫毛を起こして目を開くと、再び鎮守の杜の、蜘蛛神の滝近くに立っていた。
光る円柱の眩しさに、思わず目を細めると、灯里は隣に立つ亜蓮の脚にしがみついた。
「……そっか、戻って来たんだね。じゃあもう……行くんだよね。向こうに」
あの神々しく立ち昇る円柱は異空間に続くゲート。
そこを通れば、信じられないようだけれど、私たちは遠い星にワープするのだ。
それは亜蓮と同じ蜘蛛種が支配する星、どのような性格の種族かは分からないけれど、そこでしか私たちは自由に生きられない。
母に別れの挨拶も終えた今、灯里はもう後には退けない状態だった。
そしてもう、迷いなんかない。
覚悟を決め、息を整えて、光の方へ一歩進もうとすると、その腕を亜蓮が引き止めた。
「いえ、まだ行けませんよ。儀式が終わっていませんから」
「えっ?」
「ゲートは開きましたが、言ったでしょう?扉を抜けるには条件があるんです」
「条件」
「はい。それはすなわち、オスメスのペア、ツガイであること。
そして妊娠能力、繁殖する力があることの証明が出来ること」
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