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プロローグ
「僕と付き合ってほしい」
誰もいない教室で言われて、私は動揺した。けれど、その申し出を受けるわけにはいかない。
胸の痛みを抑えつつ、当初の予定どおりに答えた。
「ごめんなさい。あなたのこと、そういうふうには見れない」
「……そっか」
相手は気落ちした顔になったが、懸命な笑みを浮かべてみせる。
「ごめんね、急にこんなこと言って。でも、気持ちを伝えられてスッキリしたよ。聞いてくれてありがとう。今日のことは忘れてほしい」
「う、うん……」
「じゃあ、僕は先に行くね。君も気をつけて帰って」
私はうなずくのが精一杯だった。
相手が教室から出て行く。その背中を見送ってから、罪悪感に耐えきれずしゃがみ込んだ。
泣きたい。だが、私にはそんな資格もない。
「最低……」
自分を責める言葉が、体の中でこだまする。そのまま動けなかった。
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