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罪の意識
一日一日がゆっくり過ぎていく。変わらない学校生活。ただひとつ、柿崎くんと疎遠になったこと以外は。
彼に声をかけられて話し込む、という機会は一切なくなった。いまはとくに親しくないクラスメイト。ただ、委員が同じだから、完全に接触しないのは無理だけれど。
柿崎くんは、教室で見るぶんには前と同じように振る舞っている。落ち込んだ様子はない。それでも私の胸は痛んだ。
本当はショックを受けていて、顔を合わせることもつらいのなら……。それに対して、私が世界でいちばん無力だ。
一度、体育の授業から戻ってきたとき、教室から出る彼とバッタリ鉢合わせした。
私はあわてて後ずさりしたが、つまづいて転びそうになる。柿崎くんがとっさにこちらの腕をつかみ、助けてくれた。
「あ、ありがとう……」
「ううん。驚かせてごめんね」
私が首を左右に振ると、彼はにっこり笑ってから立ち去った。
表情を曇らせるでもなく、普通に接してくる。とても柿崎くんらしいけれど、申し訳なく思うばかりだ。
彼と両想いになる女子が現れればいいのに。でも、二人がすごく幸せそうにしていても、私のした仕打ちが消えるわけじゃない。
次の恋が成就してほしいのは、罪悪感を薄れさせたいがため。もし柿崎くんがなにもかも知ったら、こんなふうに思われることさえ迷惑だろう。
早くこの学年が終わって、べつのクラスになればいいのに。その日を待つことしかできなかった。
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