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(2)後ろめたい思い
大学のゼミの送別会が催され、成人してアルコールが解禁になった汐梨は酔い潰れた。気が付くとそこは以前来た事のある小日向顕の部屋で、一人裸でベッドに寝かされていた。小日向の姿はなく、寝たまま記憶をたどっている所へ、コンビニの袋を持って帰って来た。
「起きたか?いつまでも寝てないで、服を着ろよ!」
「どうして、わたしはここに?それに裸だし、やったんですか?」
汐梨が立て続けに質問を浴びせると、小日向は困った顔をして一つひとつ説明した。
「まず、昨夜はすごい勢いで呑んで、皆に絡んでた。その後は寝込んで、誰も介抱しないから、仕方なく俺が連れて帰って来た。それから、やってない!裸なのは、汐梨ちゃんが自分で服を脱いだから」
「ごめんなさい、先輩に迷惑かけて。それに疑ったりして、申し訳ありませんでした」
汐梨は自分の失態をしおらしく謝り、下着を身に着けようと起き上がった。すると、突然小日向が近付いて来て汐梨を後ろから抱き締め、胸を手で包み込んでうなじに顔を押し付けた。
「ちょっと、先輩、やめてください!わたし、そんなつもりじゃぁ」と拒んでも聞かず、小日向は
「昨夜は酔ってたから出来なかったけど、汐梨の身体が忘れられないんだよ」と訴えた。
しばらく汐梨は抵抗を続けたが、小日向の指で陰部をまさぐられた時には観念していた。ベッドに押し倒され、キスも愛撫もそこそこにはめられた。小日向は相変わらずの遅漏で、汐梨は久し振りのセックスに酔い痴れた。自分から上になったり、尻を突き出したり、獣のごとく性を貪った。
2時間にも及ぶセックスを終え、二人とも腑抜け状態でいる所に、玄関のチャイムが鳴った。
「やばい!」という小日向の声で、汐梨は我に返ってベッドから裸のまま跳び起きると、玄関に立っている見知らぬ女性と目が合った。あわてて服を身に着けていると、
「だれ?どういうこと?何で裸なの?」と彼女はわめいていた。それを小日向が、
「そうじゃないんだ、佑美。昨夜酔ってたから、泊めてやっただけだから」と懸命に釈明していた。
「ごめんなさい!わたし、先輩とは何でもなくて、ただ泊めてもらっただけで」と汐梨は、修羅場になる前に退散しようと急いで身支度を整えた。そして、玄関に崩れ落ちている佑美をすり抜けて外へ出ると、一目散に走り去った。自分自身が犯したあまりの醜態に嫌気がさし、そのまま消えて無くなりたい思いだった。
汐梨が消沈しながら家に帰ると、待ち構えていた母親に叱責された。
「どこへ行ってたの?無断外泊するなんて、男の人の所なの?汐梨はいつからそんななの!」と駄目押しされ、さらに落ち込んだ。自分のしでかした事は許されるべき事ではなく、逆の立場だったら半狂乱に陥っていただろうと想像できた。罪の意識と後ろめたさに苛まれ、自分自身を追い込んだ。
汐梨はこれまでの生活を悔い改め、ゼミの飲み会や合コンを全て断り、家と大学との往復の毎日を送った。また、自分自身を駄目にした性への執着を反省し、男子からの誘いを一切退けた。
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