§3 元カレとの不倫

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§3 元カレとの不倫

 その後雷太から何度か食事の誘いがあったが、夫の手前外出がはばかられた。そんな時、夫が東京へ一泊二日の出張で留守をすると知り、わたしから雷太に会おうと連絡をした。  その日の夕方、イタリアンレストランで食事をし、昔話に花を咲かせた。 「おれ、高校卒業してからずっと、シオリンのことが忘れられずにいたんだぜ。確かに強引に迫って嫌われてしまったけど、本当に好きだったからさ」 「あの時、わたしに男性経験があると思ってたんだよね。ライタンが初めてだったのに、ひどくない?」  高校時代を思い出しながら、ワインの酔いもあって呼び方があの頃に戻っていた。 「だって、おれの前に付き合ってた奴がいたと言ってたしさ」 「彼とは直前までで、最後まではしてないよ!だから乱暴だったんだね」  高校時代に初めて付き合った大空(おおぞら)奏汰(かなた)との甘い日々も(よみがえ)ってきて、わたしの節度は失われつつあった。 その店でワインのボトルを二本開け、覚束(おぼつか)ない足取りで二件目のバーに行った。懐かしさに酔いも手伝って、わたしは久し振りの解放感に浸っていた。 「ライタンは、どうして結婚しないの?女性との交際経験はあるんでしょ?」 「それは何人かと交際したけど、結婚となると逃げられるんだよな」としょんぼりと語る雷太の話を聞く事になった。それによると、恋人として肉体関係を持つと避けられるようになるという。さらに理由を問い詰めて分かったが、彼の物が大き過ぎて相手が耐えられないという事らしい。 「ライタンのそれ、そんなに大きかった?よく覚えてないけど、わたしには入ったよね!」 「うーん、言いにくいけど、あの時は先っぽだけだった気がする。一度きりだしね」 「そうだったんだ!今からもう一回、試してみようか!大き過ぎるかどうか、確かめて上げるよ」  彼の下世話な話につられて、わたしはとんでもない事を口にしていた。  わたしが覚えているのはそこまでで、気が付くと見知らぬ部屋のベッドに裸で横たわっていた。時計を見ると深夜の3時を過ぎており、そこはホテルの一室だった。横には雷太が同じく裸で、大きなお腹を上下させながらいびきをかいて寝ていた。頭の中は混乱し思考が追い付かず、今の状況を把握するのに手間取った。下半身の違和感は充血からくるもので、間違いを起こしたのは確かだった。 「今、何時?シオリン、目が覚めたの?もう少し寝かせてね」と雷太が寝ぼけた声でつぶやいた。 「ちょっと、寝ないでよ!どうしてホテルにいるの?私たちは何で裸なの?説明してよ!」 「うーん、かなり酔っていたから送って行くと言ったら、ホテルに行こうと言い出したのはシオリンだよ。それから、部屋に入ると突然服を脱ぎ出して、おれに抱き着いて…」  わたしはまさかの醜態に、穴があったら入りたい気持ちだった。 「そんなあり得ないよ!それで、その後はやったの?セックスしたの?」 「ああ、最初はそのつもりはなかったんだけど、シオリンに迫られて我慢できなくて…」  わたしは罪の意識と後悔で、居たたまれなかった。
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