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1.星は出会い、運命の輪は回りだす
二十五年前。正確には二十四年と数か月前。
突如として全世界の夜空から北斗七星が消えた。
それは俺──青星冬真がまだ生まれたての赤子だった時の話。
もちろんまだ赤子だった時の話なので当然、当時の事なんて詳しく覚えていない。何てったって物心つく前の話なのだから当たり前と言えば当たり前だ。むしろ覚えていたらスーパーベビーすぎてそれはそれで末恐ろしい。
しかし母はよく「世界中が大パニックに陥って、落ち着いて生活なんて送れなかったのよ」と何も覚えていない俺に当時の事を語ってくれた。そんな母の話を聞いては「それもそうだろうな」なんて俺は不思議に思うこともなかった。
だって未だにNASAなどの宇宙関連の開発機関や研究機関がパニックなのだから。今でもテレビをつければこの消えた北斗七星についての話題が必ず上がっている。二十五年も飽きずに毎日この話題を取り上げているのだ。一日二日くらい休んでもいいような気もするが、テレビ局としては格好のネタらしい。もう北斗七星が夜空に存在しないことが日常となってしまっている俺からすれば飽き飽きとしているし、ネットでも同様の声が上がっている。だがお陰様で、俺は幼心なりにテレビを通してその大混乱は感じ取れていた。
あれから今は軽く干支が二巡している。俺も、二回も年男を経験してしまっているのだ。……こう言うと、何だか己の老いをヒシヒシと感じてしまう。悲しいものだ。
それだけ月日が流れてしまっているのだから、今時北斗七星なる星の連なりを知らない子供は少なくない。もちろん、俺もその一人だったりする。……まあ俺はもう子供でもないし、とっくに成人を迎えた立派な社会人だ。だけど残念なことに、北斗七星なんて教科書や図鑑でしか見たことない。
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