1.星は出会い、運命の輪は回りだす

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 たかが北斗七星が消えたくらいで、と思うかもしれない。しかしたかが北斗七星、されど北斗七星。七つの星列が消えてから、地球はとてもおかしくなった。  簡潔に言ってしまえば大災害の連続。異常気象は当たり前になってしまい、北極や南極の氷は一気に増えたのに何故か海面が急激に上昇していった。科学では説明できない現象に多くの学者を未だに悩ませている。  それにより多くの島国が海の底へ消えていき、大陸の著名な港町もそれに引っ張られて海底(うみぞこ)の遺跡と化した。日本は奇跡的にも海底遺跡(かいていいせき)へと成り果てることはなかったが、それでも多くの浜辺や海岸は無くなり、海水浴場なんてフィクションだと思っている若者は圧倒的に多いだろう。年配の方は、よく真夏は海水浴場へと赴き砂浜で足の裏を火傷したなんて懐かしそうに話すけど、浜なんて知らない俺たちは想像し難かった。公園の砂場が何平方メートルにも海に面して広がったものと考えればいいのだろうか。  そして季節はいつまでも冬が続いている。これは日本だけの話ではなく、全世界共通だ。  まるで氷河期が来たようだという人もいるが、別に大陸が氷漬けになったわけではない。そもそも海面は凍るどころか上昇しているのだから氷河期ではないと思う。  でも春や夏なんて季節は言伝でしか俺は聞いたことがないし、そういう人は今や珍しくないだろう。半袖や薄手の上着で過ごせて、酷い時は汗ばむ陽気だったと説明してくれる人もいる。だけど体験したことのない俺たちはそもそも暑い気候というものがわからない。秋という季節もギリギリあるかないかと言ったところ。年配の方たちの言う「晩秋」という気候が俺たちにとって唯一の暖かい季節なのだ。桜と言えばジュウガツザクラかフユザクラ。ソメイヨシノは幻の花に昇格されてしまっている。俺はソメイヨシノという花を図鑑でしか見たことない。ヒマワリなんて今じゃ伝説の植物扱いだ。ドラゴンと同等である。
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