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消えたあなた
『何百、何千という本の中からあなたを探したわ。
途方もない数だったけど、必ずあなたと会えると信じていたから、無意味に終わるかもしれない日々にも耐えられた。
あの頃あなたはまだ小さかった。
五つになったばかりだったわね。
あの日、おじいさまの地下書庫でかくれんぼをしていたあなたは、こつぜんと姿を消してしまった。
そのときから私は、ずっとずっと探していたの。
周りの人たちは、もう諦めろと言ったわ。
きっとこっそり書庫から抜け出して、ふらふらと遊び歩いて、近くの川にでも落ちたんだろうって。
あるいは、夜に徘徊する屍狼にでも喰われてしまったんだろうって。
あなたが生きてることを、もう誰も信じていないみたい。私以外は。
私だけはぜったい諦めたりしない。
あなたは、あの地下書庫から抜け出したりしていないでしょう。
今もまだそこにいるのよね。
なぜ分かるかって?
それはあなたが、私にとってかけがえのない存在だからよ。
だから待ってて。
きっと私が、見つけてみせるから。』
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