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高校生になり麻友子は女子校に進学した。
ぽよよん太っていても、常に前向きな麻友子には、友達がいた。
名は、神崎ひばり。
同じく、ぽっちゃりであった。
麻友子とひばりは教室の窓際でフルーツミックスを飲みながら話をしていた。
「ひばりね、誕生日にフレンチ食べに行ったの。フォアグラってめっちゃ美味しいから大好き!」
「激しく同意!フォアグラのこってり感と柔らかい食感、30枚なら余裕で食べれる!」
麻友子は本気で目を輝かせる。
「フォアグラって鴨に無理やり食事をさせて脂肪肝にさせているもなんだって。結構な虐待だよね」
「激しく同意! 食事は楽しみながらじゃないと、美味しくないもの!」
「ほんとひどい話だよね。強制的に脂肪肝にさせるなんてー」
「激しく同意!」
高校生になっても麻友子の外見にケチをつける同級生がいたら、即、両親からクレームが入ったので、誰もこの2人をいじる者はいなかった。
「今日は渋谷に寄ろうよ。話題の揚げたてドーナツに熱々のハニーかけ放題のお店に潜入捜査なり!」
ひばりはわざとらしく敬礼ポーズをとる。
麻友子はヨダレをこぼしそうになるのを我慢して親指を立てる。
「御意!一緒に潜入いたしまする!」
まさに類友であった。
放課後、約束通り、2人はドーナツ屋にいた。
たっぷりハニーを堪能し、ミルクティーでお口直しをしていた時、ひばりが言った。
「今度、隣の男子校の文化祭に行こうよ。あの男高校、イケメン率高いって有名なんだって」
「うーん、男子校の文化祭かー」
麻友子の気が進まないのには理由があった。
麻友子は日頃から、男性に優しくされた経験がなかった。
街中で身体がぶつかれば舌打ちされ、レジでは釣銭を雑に投げられた。
両親からの愛を受け、自己肯定が異常に高かったために、こんな体験を「辛い」と感じるとはなかったのだが。
しかし、男性へと印象はよくなかったのである。
「まあ、何事も経験ね。ひばりに付き合うわ」
「ありがとう!麻友子。イケメンの巣に飛び込むぞ~」
ひばりと麻友子はとても楽しそうに笑った。
しかし、この男子校潜入で麻友子の人生が180度ひっくり返ることになる。
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