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イケメン男子高校、文化祭当日。
麻友子とひばりは「文化祭へようこそ」の看板の前に立っていた。
「いよいよね、麻友子!」
「ひばりちゃん、暑いしお腹すいたわー」
空腹の麻友子は目に力がない。
「もーだらしないな、麻友子は。ちょっと待って」
ひばりは麻友子を生き返らせる秘密のアイテムをカバンから出した。
「じゃじゃーん!
手では溶けない、口ではトロける、
不思議チョコレート♡」
「何それー!私たちにピッタシのチョコじゃない!」
まるまる一箱渡された麻友子は、みるみるボルテージがあがる。
「私が麻友子だけにスイーツを譲る意味わかる?」
「最上級の愛情表現!」
「そうよ、他の子にはあげないけど、友達の麻友子にならあげる。これ食べて、文化祭に潜入するわよ!」
「了解なり!」
早速、一口食べ出す麻友子であった。
校内ではクラスの出し物が開催されていた。
「イケメンだらけの喫茶店♡」と看板が立てられた一角の教室では、女子の大行列ができていた。
ひばりが人の隙間から中をひょいっと覗く。
その中には白シャツに黒エプロンというシンプルスタイルなのに、韓流風のグッドルッキング男子高校生が給仕をしていた。
「イケメンがいっぱいいる!ここに並ぼう」
ひばりは麻友子の返事を待たずに、腕を取り列に並んだ。
そしていよいよ2人が席に通された。
ひばりはお気にいりイケメンを探すのに夢中だった。
麻友子はどれにしようかとメニューに夢中だった。
メニューが決まり麻友子は店員役の男の子に手を挙げた。
イケメンが颯爽と歩いてきた。
ひばりは目がハートになる。
「ご注文は決まりました?」
「二ツ矢サイダーを6つお願いします!」
「6つ? 君たち2人だよね? 多すぎない?」
「暑くて喉が乾いたから、まずは駆けつけ2杯でしょ。そのあと最後の1杯でゆっくりと雰囲気を堪能するの」
なにが不思議なの?と麻友子はキョトンとする。
イケメン店員は顔面が引きつる。
「そ、そう。よく食べそうな身体しているもんね。ははっ」
そういって麻友子の手からメニューを奪いカウンターへ戻っていった。
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カウンター裏での会話。
イケメン店員たちは、ちょっとした緊急会議を行っていた。
「あの2人に居座られたら、マジで飲み物底ついちゃうぜ。何とかしないと」
「しかも、奴らがいる窓みてみろよ。水蒸気で曇ってる。ただでさえ熱いのに、さらに蒸すぜ」
「仕方ねえな、博幸、呼んでこい」
クラスの勉強ができる大人なしめキャラの博幸が連行されていた。
イケメン店員は博幸に両手を合わせてこう言った。
「博幸、悪いけど、あの窓際の2人を外に連れ出してくんない?」
博幸はホールに目を配せ、2人を確認する。
うわっと一瞬、肩が跳ねた。
「や、やだよ。ホールは君たちの持ち場だろう?」
イケメン店員は博幸の肩をガシっと掴む。
「マジ一生のお願い。おれら、お前みたいにああいう女を紳士的に扱えないんだよ。頼む」
「……、わかったよ。
代わりに会計係、やってよ」
「助かる!」
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「あの、よかったら、校内を案内しましょうか?」
麻友子たちに、そう声をかけてきたのが博幸だった。
この博幸、ぱっと見は特徴のない薄い顔だけど、目、鼻、口、がバランスよく配置され、塩顔好きな女子にはド真ん中であった。
そして博幸を見た瞬間、麻友子は恋に落ちてしまった。
ガッシャーんとグラスを落としても麻友子は博幸から目が離せない。
「か、かっこいい……♡」
麻友子の頬が紅潮する。
「と、とりあえず、外にでようか」
「ええ、喜んで♡」
麻友子は魔法がかかったように、そのまま博幸と教室から出て行った。
もう少しイケメンを堪能したったひばりだが、しぶしぶ二人について言った。
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