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その日の夕食。
麻友子は博幸の言葉がひっかかり食欲がなかった。
その姿に両親は心配し声をかけた。
「麻友子ちゃん、体調でも悪いの?」
「ママ、私って不健康かな」
「あらっ、ふっくらして艶々してとっても健康的なレディよ」
「でも、男の子から不健康な身体って言われたわ」
麻友子は俯いた。
その姿を見て、パパがはっとした。
「食欲も落ちているし、もしかしたら病気が隠れているかもしれない。ママ、検査の予約を!」
「このままだと麻友子ちゃんが痩せてしまうわ!」
両親は麻友子に事になると素早かった。
翌日には検査を受け結果がでた。
病院にて、麻友子と両親は医師からこう告げられた。
「肥満と脂肪肝だね」
一家全員、目が点になる。
「肥満?脂肪肝? 私、太っているの?」
麻友子の唇は震える。
「先生っどうしたらいいですか?麻友子を助けてください」
両親は大袈裟に医師にすがる。
「簡単ですよ。痩せればいいんです。食事量やバランスに注意して、運動もやってください」
医師はそういうと椅子をくるっと返した。
そうして一家は診察室を後にした。
麻友子は待ち合いロビーの椅子に腰かけ、あの日のことを振り返っていた。
『ドラム缶』
『デブ専』
あの言葉はすべて自分に向けられた言葉だったのだ。
そして博幸くんの言葉。
『並んで歩くのが恥ずかしい』
『健康(痩せたら)になったら並んでもいい』
肥満な自分と一緒にいるのは無理、そう言われていたのだと気が付いた。
「私、バカみたい……」
麻友子は悔しくて涙があふれた。
しかし、きゅっと袖で涙をふき取ると高らかに宣言した。
「ママ、パパ! 私、痩せるわ!
そして、健康を取り戻す!」
「麻友子……っ、ごめんなさいね、辛い思いをさせてしまって。麻友子の気持ちに添えるように、ママもパパも協力するわ」
ママの目にきらりと涙が光る。
意を決したパパが立ち上がった。
「ようしっ、早速パーソナルトレーナーを探して契約だ! そして栄養士監修の食材キットの手配をしなければ!」
時はちょうど夏休み入る頃だった。
こうして麻友子のダイエットが始まった。
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