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男子校の校門の前で待つのには、かなりの勇気がいる。
だって麻友子は男性に良い印象がないからだ。
博幸が通るのを待っている間、下校する男子たちにジロジロ見られていた。
しかし、今までも奇異な目で見られることが常だったので変わりはない。
(博幸くんがきたら、頑張った自分を見てもらおう。そして……)
校舎の方から博幸が歩いてくる姿が目に入った。
(来た!)
麻友子は鞄を握る手に力が入る。
そして、校門で待つ麻友子の姿も博幸の目に入った。
麻友子も目を逸らさず博幸を見つめる。
そして、自ら博幸のもとへと駆け寄った。
艶めくロングヘアーを揺らしながら、スタイル抜群な美女が博幸の前に立った。
「博幸くんっ、待ってた」
「……」
博幸は何も言わずただ、麻友子をみて顔を紅潮させる。
「博幸くんのおかげで、私は健康を取り戻せたわ。すべて博幸くんのおかげよ。本当にありがとう」
そういって麻友子は丁寧に頭を下げた。
その瞬間、シャツの間から豊満な胸谷間が見えた。
それを確実に見た博幸の肩がビクッと反応した。
「博幸くんに伝えたいことがあってきたの。
私、博幸くんが好き。
付き合ってください」
麻友子はお辞儀をするように、手を差し出した。
そして再び、博幸の目に谷間が飛び込む。
しかし、博幸はのぼせることはなく、むしろ腰が引ける。
「君、誰?」
博幸くんは新生・麻友子に気が付かなかった。
「文化祭で誘ってくれた麻友子よ!」
「ぼくが記憶している子とは別人だよ!
し、失礼するっ!」
今にも吹き出しそうな鼻血を抑えて博幸は全速力で走っていった。
こんな美人に告白され嬉しくない男の子はいない。
彼は良識人の両親に教わっていたのだ。
不自然に近づく美女はハニートラップ、引っかかる前に逃げよ!と。
あっけにとられた麻友子はその場にへたり込んだ。
(私は頑張って生まれ変わったのに。
博幸くん、ひどすぎる)
「大丈夫ですか?」
優しい声で囁かれ、憔悴していた麻友子はゆっくりと顔をあげた。
そこにはあの喫茶店のイケメン店員くんがいた。
イケメンくんは麻友子に見惚れており、優しく手を取り助けてくれた。
「‥‥‥ありがとう」
「足、すりむけているよ!傷口からばい菌が入ったら大変だ」
そういうと、大急ぎでカバンの中を漁り出した。
間髪入れずに別のイケメンがハンカチを手に割り込んでくる。
「これで傷口を押さえてっ」
「僕っ、絆創膏持ってます!」
「消毒が先だろう!はい、マキロン!」
「抜け駆けするなよ!」
麻友子の目の前でバトルが始まった。
何が起こっているのかわからず、麻友子は固まってしまう。
こんなすり傷、大したことないのに。
なぜ、張り合って治療しようとしているの?
その時、校内No.1イケメンが動けない麻友子の隣にきた。
次の瞬間、麻友子を軽々とお姫様だっこしてしまった。
「僕が保健室にご案内しましょう」
華麗にターンをして、麻友子を校内につれていこうとした。
「私、重いし、下ろしてください!」
No.1はクールな笑みを浮かべた。
「こんな華奢な君が重たいと?僕がしっかりお運びしよう」
「結構です!」
麻友子はイキのいい鮮魚のように跳ね、イケメンの腕からなんとか逃げた。
そして、一目散に校門めがけて駆け出した。
校門まで数メートルの距離。なのに、8人の男子に連絡先交換を懇願された。
(な、な、なんなの。この状況!
わけがわからない!)
男子の波をかき分けて、なんとかその場から脱出する麻友子であった。
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