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「帰蝶」
「ん?」
振り返った彼女は、出会った時のまま。
『ねぇ、私も仲間に入れてくれない?』
その時は、便利屋にとって大人の女性に感じた彼女。
しかし、今は同い年くらい。
いや、時に少女のようにも見える。
彼女の本名も、過去も、本当の姿も、便利屋は知らない。
「俺のキャビネの中につまみもある」
「やるぅ!」
「ちょっ! 足元気を付けろよ?」
「だいじょぉぶ」
下駄を履いてるはずなのに、そんなことを感じさせないほど軽い足取りで、帰蝶は階段を下りて行った。
遠ざかっていく足音に寂しさを感じてしまう。
背後では花火が美しく咲いては、またゆっくり消えていく。
まるで彼女のよう……
いや、ここが、秋品がある限り、彼女も、他のメンバー達も猫達も、そして自分も、存在し続ける。
夜空が明るくなる。
轟く打ち上げ音と漣のような人々の歓声。
「来年も、な」
便利屋はまた花火に――現実に向き直ったのだった。
~★イベント 夏祭りの後…… 終わり~
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