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「サンキュー、帰蝶。いいもんになった」
大きく伸びをして笑った便利屋に対して、帰蝶は苦笑した。
「ちゃんと残業代を請求しなさいよ?」
「ああ。てか、帰蝶もな」
「私は勝手にやったの」
そう言った帰蝶は、ぬるくなってしまったラムネを見た。
「冷蔵庫に入れておけばよかったわね」
「あ、ビールなら冷蔵庫にある」
「最高じゃん」
ラムネを入れ、代わりにビールを持ってきた帰蝶に、便利屋は「さんきゅ」とお礼を言った。
プシュッと開け、「乾杯」と互いの缶を当てた。
「てか、事務所の冷蔵庫にビール入れてていいの?」
「これで共犯」
眉を潜めながらもビールを飲む帰蝶に、便利屋は二ッと笑った。
「もぉ」
帰蝶は呆れたように笑った後、動画を再生した。
それから。
「夏祭りかぁ」
「行ってみるか?」
柔らかな表情で動画を観ていた帰蝶だったが、便利屋の問いに小さく首を横に振る。
「前に言ったことあるでしょ? 私、神様に好かれてないの」
彼女の表情が少しだけ寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか。
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