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夜空に咲く大きな光の華。
この事務所は高いビルではないものの、遮る建物は意外にもなかった。
盛大に咲いた後、パラパラと光の花びらが儚く消えていく。
屋上の手擦りに身を預け、便利屋はビールを片手にそれを見る。
もう片方の手で頬を擦りながら。
「ぃだだぁ……」
「ごめんってば」
隣にいた帰蝶は肩を竦めて謝罪をしたが、本気で反省しているようには見えなかった。
が、このくらいで怒っていたら、彼女と友人ではいられない。
便利屋は、「いいよ」と小さく息を吐き、苦笑した。
また大きな赤い華。
「来年は秋品全員とここで花火見るか」
「聖ちゃんも呼ぼ~」
「だから、ちゃん付けは……」
「明日、スケジュールは私が訊いとくから。来年の夏空けといてって」
「今から⁉ しかも、それだと決定事項だし!」
「だって、一緒に見たいじゃん」
楽しそうな彼女に諦めて、便利屋も苦笑する。
「もう一本、ビール取ってくる」
「私が行くわ。ラムネも一緒に持ってくる」
ふわっと九つの巻き毛が揺れる。
それが花火の光からか、金色のそれに見えた。
しなやかな身体が、美しい横顔が、一瞬見知らぬ者に思えて。
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