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どこまで行っても、私は消耗品だ。
高嶺の花なんてご立派な肩書きを付けられたって花はいつか枯れる。その運命に抗うことなど誰にも出来ない。
部長相手に期待もしていなかったものの、この件に関する解決策は何も見出せないままに私は会議室から放流された。こんな時でも、うちの部長には部下を守る甲斐性もない。
だが、広報部のフロアに戻ればそれはそれで針の筵だった。ちらちらと向けられる不快な視線には好奇が滲んでいる。あれ本当なの?なんて小声で囁かれる噂話をいちいち耳が拾うから、無駄に精神を消耗する。
これまでもネット上で野次を投げられることは何度もあった。それをすべて真に受けていたら身が持たないから、なるべく視界に入れないように残酷な文字列からは目を逸らしていた。
承認欲求が強すぎて痛々しいとか、顔のどこを整形しているとか、学生時代は男遊びが激しかったらしいとか。出所もわからない情報を勝手に書き連ねられた挙句、それを見た人が、自分に都合の良い情報だけを鵜吞みにするような有様には当然疲弊する。
それでもこれが仕事だった。
だから今まで、逆らわずにやって来たのに。
「深山さん、これお願い出来る?」
席に着いて黙々と仕事をしていたところ、退勤時間の直前になって、にっこりと美しい顔で微笑む同僚に声を掛けられた。四年先輩の小林だ。私の後ろに回った小林は紺色のネイルに彩られた指先を液晶にかざした。
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