Road*1

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「じゃあ何?結局あの男は何の罪にも問われないの?」 「そうみたい。決定的な証拠がなかったから」 母親の言葉に、美和(みわ)は唇を噛み締めた。 だから最初から結婚には反対だったのよ、と言いたいのを堪えながら、もっと強く反対するべきだったと後悔した。 ◇◆◇◆  ――美和には双子の姉がいた。 名前は美知(みち)。 二卵性の双子だったためか、容姿も性格もまるで違った。 よく言えば元気、悪く言えば考えなしに突っ走る性格の美和は、幼少期から男勝りだった。 顔は父親に似て少し派手な顔立ちだったためか、学生時代はいつでも人に囲まれていたように思う。 一方で美知は、おしとやかというかとにかく大人しい性格だった。幼少期からインドアな趣味ばかりで、外に出るのを好まなかった。 母親に似て、ぱっちり目ではあるものの一重の和風な顔立ちだった。 本当に顔立ちが全く似ていないため、周りからいつも「顔よりも名前の方がそっくり」と言われた者だった。 自己主張が強く、男と肩を並べて張り合ってしまう性格の美和と違い、美知は昔ながらの女性といった具合に、男性より一歩後ろに引いて男性を立てることができる性格だった。 そのため、二十歳を過ぎた頃から美知のモテ期が始まった。 大学の同級生にも、就職先の同僚にもとにかくモテた美知が生涯の伴侶に選んだのは、大手銀行員の田代(たしろ)史人(ふみと)という男だった。 双子の姉妹より5つ年上の彼の魅力を、美知はこう語った。 「大人の余裕があって、私がどれだけ失敗しても笑って許してくれるのよ」
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