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大人の魅力と美知は言ったが、美和にはまるでわからなかった。
亭主関白の気質を感じて、とにかく苦手意識が芽生えた。
大人しい美知はきっと田代に言われるままで、反論できない。
そう思った美和は、結婚に反対した。
「もっと他にいい人いるって」
こうも言った。
「今焦って結婚しなくてもいいんじゃないの?」
しかし、美知はまるで田代でなければいけないと言わんばかりに、田代と結婚したがった。
美和が反対しても、両親は
「まぁ、美知がそこまで言うのなら」
とあっさり承諾してしまった。
◇◆◇◆
――田代は、美和が思った通りの人間に限りなく近かった。
いわゆる亭主関白気質で、美知は次第に疲弊していったように思う。
それまではしていた最低限の主張もついにはしなくなり、何か物音がすると異様に怯えるようになった。
些細な失敗や、少しの待ち時間にも、周りに対して頭を下げて「ごめんなさい」と言うようになってしまった。
それこそ、人の手ではどうにもならない、赤信号で車が停止するとかスマホの読み込み時間が少し長引いたくらいのことでもやたら謝っていた。
結婚から1年経つ頃には、夏でも長袖の服を身に着けるようになっていて、明らかに様子がおかしかった。
それでも、美知は田代を悪くは言わなかった。
ただ、自分が悪いのだと笑ってはぐらかした。
「お姉ちゃんには、田代さん以外にもいい人いるんだよ!?」
見かねて美和が言うと、美知は困ったように微笑み、「そうかしらね?」と首を傾げた。
「田代さんが何と言おうと、お姉ちゃんは絶対に悪くないよ」
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