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田代から、美知の遺品が郵送されてきたのは、美知の死から2ヶ月も経ってからだった。
美知の持ち物は、思っていた以上に少なかった。
服が数着、彼女のスケジュール帳、充電の切れたスマホとメイク道具以外は、特に目ぼしいものはなかった。
「美知、あなた本当に幸せだった?」
メイク道具も、最低限のものしかなく、筆箱ほどのサイズのポーチに一式収まっていた。
何気なく美知のスケジュール帳を開くと、予定はほとんど書き込まれていなくて新品同様に見えた。
パラパラとページをめくると、後ろのページに、美和に送ってきたのと同じような内容の文章が綴られていた。
≪助けて。しんどい。
もう限界。≫
≪暴力には耐えられる。
でも家族を悪く言われるのはツラい。≫
いつも笑って、大丈夫だと言っていた美知の本音が小さな文字で書かれていた。
≪家族には心配かけたくない。
美和が反対していたのに、押し切ってまで
結婚したのは私だから。
幸せだって思っていてほしい。≫
こういう時くらい頼ってよ。
家族にだけは遠慮しないでよ。
美和は、唇を噛み締め、両目からこぼれる涙を拭った。
その後のページにも、DVを受けた美知の悲鳴のような本音がつづられていたが、読むことができなかった。
あまりにも美知の本音が赤裸々で、義兄への怒りのあまり吐きそうだった。
DVの確固たる証拠がなく、泣き寝入りするしかないと思っていた。
そうやって、何事もなかったかのように生きていく道しかないと思っていた。
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