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だが、美知の本音を見た今、それはできなかった。
全てなかったかのように笑って生きる道は、美和にとってはあまりにも厳しい道だった。
「許さない」
絶対に許さない。
美和はスケジュール帳を握りしめ、田代への復讐を誓った。
このスケジュール帳を警察や弁護士に見せれば、彼のDVを裏付けることはできるかもしれない。
だが、死人に口なしと言うように、田代が上手い言い訳を口にすれば、罪を逃れることもできる。
それに、結局のところ美知は自殺なのだ。
美和たち家族に慰謝料を払わせることはできても、それは美知への償いではないし、田代にとっては何の罰にもならない。
それでは意味がない。
美知をこれほど苦しめた男に、同じ苦しみを味わわせたい。
それは、生きてきた中で初めて感じるほどの強い怒りだった。
体の中で、猛獣が暴れているみたいに、理性で封じ込めることのできない何とも言えない強い怒りだった。
美知は自ら命を絶った。
田代にも、代価を支払わせたい。
美和は、そのために田代の動向を探った。
怒りで気が狂いそうでも、田代への復讐のためなら頭がよく働いた。
田代を見張ってわかったのは、彼には既に新しい恋人がいるということだった。
もしかしたら、結婚生活を送っている間からの繋がりかもしれないと思うほど、彼らは親し気だった。
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