14 ロイツを狙う者たち

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 ロイツを包囲し追いつめた頭巾娘たちは、しかし、いつのまにかその姿を見失っていた。  ふらつきはじめたロイツが、通りを歩いていた人とぶつかったのまでは確認したが、それを最後にロイツの姿が消えてしまったのだ。  ――まるで術にでもかかったかのように、彼の痕跡、気配を探ることさえできなくなっていた。  いったん集まった頭巾娘たちは、完全に浮足立っていた。 「彼は?」 「わからん。消えた」  頭巾娘と狸娘は驚愕した。 「撒かれたの? 嘘でしょ? 麻酔薬を受けた状態で? 大型種を動けなくできるほど強力なやつ使ってんだよ?」 「解毒薬飲んで応急処置でもしたんでしょ。でなければ、とっくに気を失ってるはずだよ」  追われている状態で、そんなことができるロイツの判断力に、頭巾娘たちは内心、舌を巻いた。毒とともに傷を負い、さらにこんなふうに追われていたら、普通なら逃げずにはいられない。  しかしロイツは、毒と傷をそのままにしたら、いずれ動けなくなり、頭巾娘たちに捕らえられると判断したのだろう。そんな判断ができ、それを実際にやってのけたということは、ロイツがこういったやりとりに慣れている証拠だった。  頭巾娘も狸娘も、ロイツを監視していたほかの監視者も、相手はただの子供だと侮っていた。多少、武術の心得があり、利口ではあるが、普段のロイツの生活を監視して、彼ののんきな性格に惑わされ、本質を見誤っていた。  諜報と監視を生業とする彼女らにとっては、してはならない失態だった。
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