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そもそも、ただの子供ではないと判断したから、組織はロイツ・ウィルメストを監視することに決めたのだ。組織が数千年もの間、隠してきた秘密を暴く可能性のある、危険な存在だと。それをつい忘れてしまっていた。
「ほんとに、なんなんだよ、あの子は……」
頭巾娘は、悔しそうに吐き出した。
しばらく周囲を探したが、結局、ロイツを見つけることができず、街は夜のとばりに包まれてしまった。最後にロイツの姿を確認したとき、すでに閉門の刻限は過ぎていたから、街の外に出たとは考えにくい。
「仕方ない。街の門に張り込んで、現れたところを捕まえるしかない」
「人目があるのにいいの?」
「こちらの存在がバレたんだ。もう、なりふり構ってらんないでしょ」
そんな話し合いをしているさなか、樹州に潜伏中の諜報本部から琴隼が届いた。それを読んで、一行は困惑した。
「任務を中断して、本部に戻れ? なんで?」
「リーメル評議会に潜入していた仲間から、現在、樹州で起きている異変についての報告があったらしい。その詳しい状況を調べろと、上層部から命令がきたんだって」
「ロイツ・ウィルメストは、ほっとくってこと?」
「そう言うことになる」
一様にため息が漏れた。もっとも悔しそうにしていた頭巾娘は、いまにも発狂しそうな様子で身体を震わせた。
「くっそぉ……。あいつ、いつかぜったい泣かす。土下座させて『お姉さん、ごめんなさい! 許してください!』って言わせて、頭踏んづけながら高笑いしてやる」
そう言った彼女に、狸娘たちは気味悪そうな顔をした。
「おまえ、いま、すごく気持ち悪いぞ」
「ほっとけ!」
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