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そのとき建物の扉が開き、センリとフリネを従えるようにヤヒメが入って来た。
「無事のようじゃな」
驚いた様子のロイツに、ヤヒメ――いや、縁狐ヨスガが薄く笑った。
「どうして?」
「お主に用があってな。ユキカに頼んで、占いでお主の居場所を探って、ここまで来た」
「ロイツくんを追ってた連中は?」
たずねたユキカに、ヨスガは少し難しそうな表情をする。
「慌てた様子で、街を出たようじゃ」
「いま、ですか? すでに閉門の刻限が過ぎてるのに?」
「うむ。連中のもとに、琴隼が飛んでくるのを見た。どこからか連絡が来て、それに従って動いているようじゃったな」
「連中はいったい?」
ヨスガはため息をついて、そばにあった椅子に腰をおろした。
「わからぬ。一年くらい連中の素性を調べてきたが、どこから来たのかすらわかっておらぬ」
「え?」
ロイツは驚いた。
「一年? そんな前からいたの? もしかして、ぼくを狙って?」
そうじゃ、と頷いて、ヨスガはセンリとフリネを見た。
「連中に気づいたのは、この二人じゃ」
「なんで教えてくれなかったの?」
「縁狐さまに伏せるよう言われたんだよ」
センリが苦笑交じりに答えて、ヨスガは頷いた。
「お主に危害を加える様子もなかったし、連中の正体を探るため、しばらく放置することにしたのじゃ。お主に伝えなかったのは、我らのことを悟られないようにするため。お主は、すぐ顔に出るからの」
「な、なるほど。めっちゃ心外だけど、納得だ」
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