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「さて、そろそろ本題に入るか」
「本題?」
「わらわたちがここに来た理由じゃ。お主に、一刻も早く竜核のありかを突き止めてもらいたい」
ロイツは、不審そうに眉を寄せた。
「前にも言ってたね。たしか、霊獣としての予感、とか……。いったいどういうことなの?」
ヨスガは、ちらっとユキカを見た。視線を受けたユキカは、ヨスガの代わりに答えた。
「あのね、これは前提として知っておいてほしいんだけど、私たち煌倭の民にとって霊獣の予感っていうのは、とても重要な意味があるの。霊獣は、災異の兆しを感じ取ったり、それを防ぐ方法を無意識に口走ったりするの」
「予知とか予言みたいな?」
「そうそう。しかもそれは、ほぼ確実に現実になる。だから煌倭の民は、霊獣の予感を、たとえまったく根拠がなくても、けっしてないがしろにしないの」
ロイツは頷く。
「それで、今回、縁狐さまが感じ取った予感は、現在、竜核で起きている出来事」
「出来事?」
たずねると、ヨスガは顔をしかめた。
「詳しくは聞くな。霊獣の予感は、ときに他人に理解されないことがあるが、それは感じ取った本人も同じなのじゃ。どういうことなのか、わらわ自身にも、よくわからぬ」
へぇ、とロイツは不思議そうに頷いた。
「まぁ、そういうわけだから、お主の竜核探しを、わらわも全力で協力する」
「すごくありがたいんだけど、いまは、ちょっと難しいかも……」
複雑な表情で言ったロイツに、ヨスガは軽く眉を寄せた。
「なぜじゃ?」
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