14 ロイツを狙う者たち

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 唖然とするロイツにヨスガが笑い含みに言った。 「お主も、本当はあきらめたくないのであろう? だから、公文書館の展示室にあった、評議会憲章の複製とやらの前で、ぐずぐず思い悩んでいた」  ロイツは顔を強張らせる。 「み、見てたの?」 「いたたまれなかったのぉ。まるで、お預けをくらった犬猫のようじゃった」  ヨスガは笑みを深くした。 「じゃが、わらわと手を組めば、誰も不幸にすることなく、お主の願いを叶えてやれるぞ。大丈夫じゃ。なにも不安することはない。ぜったいに、うまくいく」 「いや、でも……」 「もし、なにか問題が起きたら、すべての責任は、わらわが負う」  ヨスガは身を乗り出し、手を差し出した。 「お主が長年探し求めてきた秘密が、目の前にあるのじゃぞ? ちょっと手をのばせば、掴むことができる」  ロイツは口をつぐんで、差し出された手を見た。 「なにをそんなに迷っておるのじゃ。かつてはお主も、よく言っていたではないか。『バレなきゃ、大丈夫』と……」  ロイツは、はっとヨスガを見た。いつも真面目で快活なヤヒメの顔で、ヨスガは悪い笑みを浮かべている。 「そんなこと、言われたら……」  ロイツの中で、なにかが切り替わった。やがて、差し伸べられたヨスガの手を取った。ヨスガは、にっと笑った。 「契約成立じゃ」  それを見ていた、ユキカたちは内心ため息をついた。 (ほんと、悪い狐だ……)
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