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ユキカは三枚の収蔵庫の図面を並べた。
「地下の収蔵庫内も、かなり厳重だよ。それぞれの階層、部屋ごとに分厚い扉と鍵がつけられてる。評議会憲章の原文が保管されてる場所は、その中でも最も厳重で、最下層の一番奥に設置された大きな金庫の中にある
「鍵はどうでしたか?」
ヤヒメがたずねると、センリとフリネは渋い表情で首を振った。
「さすがに入手できなかった。特に評議会憲章が保管されてる金庫の鍵は、どこにあるかもわかってない」
「公文書館の館長も、館の警備を掌握してる衛兵長も、金庫の鍵の所在を知らないっぽい」
「鍵を知ってる人物で考えられるとしたら、評議会の理事会議員の中の誰だろうね」
ロイツが口を開いた。
「たぶん理事長だ。評議会が管理してるモーリス・エドガーの『第八旅団記』を所持してたし、議員の中でも、こういった文化財の保護に携わってるから、評議会に関わる施設の鍵は、ひととおり持ってるんじゃないかな。評議会憲章が保管されてる金庫の鍵も、理事長が持ってると思う」
「借りることは……」
これには、ヤヒメが首を振った。
「それはやめたほうがいいっすね。クリエンテ理事長は、かなり勘の鋭い人ですし、うちらの存在も知ってます。ロイツくんが評議会憲章を調べたがってることも。鍵が紛失したとわかったら、まっさきにうちらを疑うと思うっす」
「そこまでの危険はおかせないか。下手すると煌倭との問題になるもんね」
しばらく考えて、ヤヒメが言った。
「鍵は、うちがなんとかしましょう。明日、鍵の種類を調べて、可能ならピッキングで行けるかもしれません」
ユキカが頷いた。
「鍵のほうはヤヒメに任せる。収蔵庫に侵入する方法と、万が一の脱出経路は私らで調べるよ。侵入に必要な道具類も集めて、可能なら、明日の夜に決行する」
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