15 竜核のありか

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「いま樹州で起きている異変と関係しているんでしょう。評議会が蓄えていた兵糧も一緒に持ち出されてたみたいっすから、魔獣や魔物の襲撃に備えているのかも」 「こっちとしては好都合だけどね」  そう言ったユキカは、公文書館の見取り図の上に、別の図を六枚置いた。それらは、公文書館の最奥にある施設の見取り図だった。 「評議会憲章の原文が保管されている場所も特定したよ」  ユキカが出した見取り図に注目する。 「公文書館の裏に、文書の修繕と保管を行う建物がある」  ユキカは図を一枚一枚示しながら説明した。図の一枚は建物の全体の絵、残り五枚は階層ごとの見取り図が描かれている。 「地表に出ている二階は、おもに文書の汚れを落としたり修復したりするところで、地下が収蔵庫になってる。建物の周りを堀が囲っていて、さらにその周りを分厚い壁と天井が囲ってる。天井は一面ガラス張りになってる。外からの光を入れて、中を明るくするためだね。夜は建物の周りに篝火を焚いて、かなり明るくしながら警備してるみたい」 「建物の中に、建物がある感じ?」  ユキカは頷く。 「これも防犯の一環らしいよ。ちょっと面白くてね、建物を囲ってる壁は音をわざと反響させるよう造られてるみたいで、堀に小石が一つ落ちただけでも、水がはじける音が出入口を守ってる衛兵のところまで響くんだって。音に気づいたら、付近に配備された衛兵が全員駆けつけて建物を包囲、さらに館を閉鎖して、職員とともに中をあらためるんだって」  うわぁ、という声が室内にもれた。 「かなり厳重だね」 「それだけ中の物が貴重だってことだね。評議会憲章もだけど、各国の古い公文書資料なんかも保管されてるみたいだし」
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