37人が本棚に入れています
本棚に追加
/430ページ
ロイツは、テーブルに広げられた図面を眺めた。
「一つ、聞いてもいい?」
「なに?」
「これらの情報って、どうやって集めたの?」
ユキカたちは顔を見合わせ、ヤヒメが答えた。
「いろいろ、っすね。聞き込みして、館内で侵入できるギリギリのところまで侵入して、そこで情報を集めて。でも、一番尽力したのは、ダイキチっすかね」
ヤヒメは自分の肩に乗った羽耳兎ダイキチをなでながら、口に人差し指を当てた。
「これは秘密なんすけど、うちら玄甲衆には、使い魔に自分の魂を乗せる術があって、その目を通していろんなものを見ることができるんです。使い魔自身も、主人の魂を乗せるうちに、人としての性、というんすかね、獣とは思えないほど利口になるんですよ」
ロイツは目を見開き、ヤヒメとダイキチを交互に見た。
ダイキチが小型の使い魔にしては異常なほど利口な理由がわかった。
マレン牧場では、炬狛や忻羚といった騎獣を放し飼いにし、炬狛にいたっては家畜を見張る牧羊犬のような役割をしている。ダイキチは小型種にも関わらず、その騎獣たちの監視役をしていた。ロイツたちが窮地の際は、ヤヒメの使いとして現れ、普段の仕草にも人くさいところがあった。
それらは、ヤヒメの魂を身の内に宿すうちに見についた、人の性質なのだという。
ユキカは首をかたむけてヤヒメを見た。
「ヤヒメ、それ、言っていいの?」
「ロイツくんなら、かまわないっす。お頭も、万が一のときは、ロイツくんの前で使ってもいいって言ってたんで。ただ、これは玄甲衆の秘技なんで、誰にも言わないでくださいね?」
「わかった」
頷いたロイツは、ふと自分の肩に乗る晶霊族のフィオを見て思った。使い魔にできるなら、という思いが頭によぎる。
(今度、ヤヒメに聞いてみよう)
最初のコメントを投稿しよう!