15 竜核のありか

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 それらを眺めながら頭の中で侵入経路を再確認して、ヤヒメは背嚢から鉤縄を取り出した。篝火の薪の補充を終えた衛兵が仲間のところに戻っていくのを待って、壁の内側の端に鉤をしっかりと引っかけ、壁の外へ縄を投げ落とした。  ヤヒメが縄を落としたのを認めて、ロイツとユキカは(いしゆみ)を茂みに隠し、周囲に人の気配がないことをたしかめながら壁に近づいた。 「ロイツくん、先に」  囁き声でユキカが言って、ロイツは縄を掴んだ。力いっぱい引っ張って、外れないかたしかめる。上をむけば、壁の上のヤヒメが親指と人差し指で丸を作り「大丈夫」という仕草をする。壁に刺さったままの矢に足をかけ、縄をたぐりながら壁をのぼっていった。  壁の上まで来ると、ヤヒメが手を掴んで引きあげてくれた。その次にユキカがのぼる。ほとんど縄だけで身体を支え、壁に刺さった矢を引き抜きながら、非常に滑らかな動きでのぼってくる。鏃には返しがついていないから矢は抜きやすくなっていた。  ユキカが壁をのぼる間、ヤヒメは別の鉤縄を取り出し、軽く振り回して勢いをつけ、収蔵庫のある建物にむかって投げた。屋根の端に引っかかると、羽耳兎(うじと)ダイキチが縄を伝って渡りはじめた。  ダイキチは収蔵庫に到達すると、屋根に引っかかっている鉤をいったん外し、屋根の四隅についた、きのこ型の排気口の付け根に縄をまわして、鉤を引っかけて固定した。  ダイキチが縄を固定すると、ヤヒメは縄のついていない鉤を壁の外側の端に引っかけた。鉤元の環に縄を通して、ピンと張るように引っ張りながら縛った。縄が外れないかたしかめ、片足を縄にからめながら、這うように縄を渡りはじめた。  ヤヒメが縄を渡りきるころ、ユキカも壁をのぼりきった。引き抜いた矢は、あとで回収しやすくするため、壁をのぼるのに使った鉤縄と一緒に一つにまとめて壁の端に置いた。そして、背嚢から滑車を取り出し、ヤヒメが渡った縄に取りつけた。  ユキカがうながし、ロイツは縄にしがみついた。ユキカが手早く滑車についた鉤とロイツの腰に巻かれた帯を繋ぐと、ロイツは縄をたぐるように渡りはじめた。  ロイツが渡りきると、ユキカもそれに続いた。
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