15 竜核のありか

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 三人が無事に渡ると、ダイキチが再び縄を伝って壁のほうへ戻っていった。縄を回収するため、鉤を外しに行ったのだ。  ダイキチと一緒に縄を手繰り寄せて鉤を回収すると、ヤヒメとユキカは屋根の隅に飛び出ている通気口を外しにかかった。  音をたてないよう手早く慎重に通気口を外すと、ヤヒメはそっと顔を突っ込んで中を覗いた。  堀というより池に近い水溜りの中に、砂利を敷き詰めた島があった。その上に建つ立派な御殿では、職員がまだ働いているのか、ところどころに灯りが見えた。島に敷き詰められた砂利も、踏めば大きな音がでそうなものを使っているらしい。  しばらくして、中の灯りが消えはじめた。収蔵庫内で働いていた職員が、建物から出てくるのを見て、ヤヒメは手の中の獣笛を吹いた。  公文書館から収蔵庫へ通じる回廊付近を掃除していたセンリとフリネの耳に、ヤヒメの獣笛の音が届いた。  音を聞いたフリネは、枯葉や草を詰め込んだゴミ袋の口を縛った。袋はフリネの太もものあたりまであり、中身は枯葉や草ばかりだが、それなりに重い。 「よいしょ――うわっ」  勢いをつけてゴミ袋を背負った瞬間、フリネは袋ごとひっくり返ってしまった。フリネに下敷きにされる形で床に落ちたゴミ袋は、ぱぁん、という騒音をあげながら内側から破裂して、中身がぶちまけられた。  窓を掃除していた清掃員仲間のおばちゃんが、それを見て爆笑した。  収蔵庫の入り口にいた衛兵たちは、騒音に驚いて振り向いた。床に仰向けに倒れているフリネと、その周囲に散らばっている大量の枯葉と草を見て、なにが起きたのか理解して彼らもまた失笑した。
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