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「しかし、これ……すげーな」
その手がするり。と、翡翠のわき腹を撫でる。
翡翠の身体ははっとするほどに色が白い。象牙色などとは言えない。もはや、青白くさえ感じるほどの白さだ。それは、乱暴な行為に息が上がっていても同じで、まるで血の通わない石膏の像のようだ。
その細く、浮いた肋骨の下、鳩尾から太腿の中ほどあたりに隙間なく無数に浮かぶ黒い文字。それは、翡翠の肌全体を一部の隙間もなく、どんな場所も例外なく埋め尽くしている。そして、それは、久米木の腕にある文字とよく似ていた。
「これで、“ゲート”の力を吸収できるようにしてるんだろ? マジでこいつ見るまで、男の“ゲート”がいるとは思わなかったな」
するすると、文字のあるあたりを何度も撫でられる。おそらくは、その滑らかな感触を味わっているのだろう。“貧相なガキ”と評したはずのその身体は、確かに男性のそれなのだが、まるで生娘の肌のように滑らかだった。しばらく、文字の描かれている肌を撫でまわした後、下腹部のあたりに手が触れると、男はいきなりその手で強く圧迫してきた。
「……っ!!」
思わず漏れそうになる声を翡翠は必死に飲み込む。
ソコを押さえつけられると、圧迫感に息ができなくなって、思わず力が入ってしまう。
「うお。締まるっ。こいつ身体だけなら、女よりイイんだよな」
そう言って、男は翡翠の上半身に自分が着ていた上着を投げつけた。
視界が塞がれてあたりが闇に包まれる。その世界では、犯されている感覚だけが鮮明だった。
こんなこと、もちろん、望んでしているわけではない。翡翠は同性愛者だったけれど、愛してもいない相手に抱かれて喜びを感じるタイプでも、生活に困って身体を売っているわけでもなかった。
顔を隠されて、男たちから見えなくなると、涙が溢れてきた。泣いているところなど何度も見られているし、情けなく救いを求めることも、やめてほしいと懇願することもあった。けれど、痛みや屈辱ならともかく、恐怖や怯えで流す涙を見られるのは嫌だった。
翡翠は怖かったのだ。自分より明らかに体格がいい男に圧し掛かられること。思うさまに犯されること。彼らが自分に対して全く性的な欲求をもっていないのに、そうされること。
そして、同時にもっと恐ろしかった。
助けてくれる人など誰もいないこと。助けを求める人の顔すら思い浮かばないこと。
きっと、一生、自分はこのままここで男たちの慰み者になるしかないのだと理解できてしまうこと。
だから、涙が溢れるのだ。
「ま、これでいい。“魔光”だけは、料金分しっかりもらってくぜ」
そういって、さらに行為は激しくなっていった。
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