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「……っつ……あ」
そんな動きだけで、身体が軋むように痛む。顔の傷も、拘束されて手錠で擦れた傷も、乱暴にされた場所も酷く痛む。
でも、それ以上に体内にあんな男の残滓が残っているのが気持ち悪くて、翡翠は重い身体を無理に起こした。その瞬間、こぷ。と、小さな音がして、ソコから生暖かいものが溢れ出す。ぞ。と、寒気がするような感触に翡翠は眉を寄せた。
「……くそっ」
また、涙が溢れ出す。
心の中に押し込めていた悔しさとか、嫌悪感とか、痛みとか、全部ごちゃ混ぜになって、座り込んでしまいたいのを我慢して、足を引きずって、シャワールームに向かう。足につけられた鎖がじゃら。と、嫌な音を立てた。
シャワールームに入って、頭からシャワーのお湯をかぶると、少しだけ落ち着いてきた。シャワーのお湯をあてながら無理矢理自分で中に入った精液を掻き出すと、もう、力が抜けて、立っていることができなくて、翡翠はお湯を出したまま、浴槽に身体を沈めた。
酷く疲れていた。
身体を売らされた後は大抵そうだ。立てないくらいに疲弊してしまう。
それも、そのはずだ。彼が売らされているものは、単に身体のみではない。セックスすることで身体に描かれた紋を介して身体の内部にある“力”を奪われているのだ。
「……なんで」
翡翠は思う。
彼がここに閉じ込められて、身体を売らされるようになってから、どれくらいが経ったのだろう。おそらくは、1年近い。こんな部屋にいて正確な日数は分からない。何人の相手をさせられたのかももう覚えてはいない。数えていたら頭がおかしくなっていたと思う。客が来ると2時間は挿れられたまま、何度でも犯される。
優しい男もいる。けれど、殆どは今日の客のように乱暴で、自分勝手な男ばかりだ。
「なんで」
両手で顔を覆う。一人になると涙は止まらなかった。
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