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渋滞が明けて懐かしい街並みが見えた。剛士の実家の近くに我が実家もある。帰る時は実家にも寄るつもりだ。
義父母から離れるために親からも離れた。
ごめんなさい、お父さんお母さん。もうすぐ会わせますからね。親からも義父母とよく町で会うから嫌な思いしてないかしら。
実家が見えた。お父さん仕事から帰ってる。そこは通り過ぎた。剛士も私の親から怒られてもう会いたくないんだろう。私と穂乃果だけで実家行ってきて、とまでも言ってた。
このお腹の子が生まれたら離婚を考えよう、大丈夫かしら。だってあの時の義父母たちを止めていたら、早く私を守ってくれていたら私は嫌な思いをしなかった。今はいい夫のふりなんてして、ね。嫌になる。だから離婚したい。
なんてね。
剛士にはたくさん私の代わりに稼いでもらうわ。
剛士の家の近くまできた。が、とても異様な雰囲気をすぐ感じ取った。
「うわ、なんやあれ」
剛士の顔が引き攣った。私も同じ心境だ。
目の前に大きな鯉のぼり。他の家庭にはない、目立つ鯉のぼりが。そう、こどもの日も近い。確かに数軒ほど鯉のぼりは飾ってはいるが小さいものばかり。
そしてあの家には子供なんぞいないのに。よく見ると真新しい鯉のぼりだ。きっとこの日のためなかったのだろう。
我が家にもついに後継が生まれたのよ、と自慢をするかのように。
その時思い出した。義父母の言葉。
「次は後継ぎを産んでくれよ」
つまり男の子を産めよ、とのことだ。ニヤッと笑ったあの義父の顔。まだ私の不倫を疑う義母の顔。ビデオ通信越しなのに寒気を感じた。
穂乃果が生まれた時も最後の最後まで男の子が生まれると思っていたとか。雛人形はあなたの子供の頃からのを持って行きなさいって。初孫なのにね、なんだろうか。
すると車は停まり、Uターンした。
「どうしたのよ……家行かないの?」
「行かへん、お前の実家行くわ」
「なんで、泊まるって……」
「あほう、あんな家にもう帰らん」
剛士は私の実家まで黙ってた。バックミラー越しに鯉のぼりは揺らいでたが段々小さくなっていく。
そして久しぶりについた実家。親はとても喜んでいる。母は体調が良くなさそうだったが穂乃果をまた喜んでいた。まだ寝てた娘も起きた。暑かったのか着ぐるみの服は脱がせて私の選んだ可愛い服に着替えさせるとニコニコ笑った。
「可愛いねぇ。もう二歳かね」
穂乃果はうちの母を不思議そうに見てるがニコニコだと微笑むと母は笑った。すると
「大きくなったな、次の子はどっちだ」
父がそう言った。私は夫を見た。彼は微笑んだ。私は夫の決断に驚いた。だから私は言えた。
「次の子は女の子よ」
終
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