ギルドで待ってる

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 僕に物を書く楽しみを教えてくれた人。  それは、高校の同級生である、イツキだった。  高校に入学したばかりの頃、周りに友人がいなくて引っ込み思案な性格だった僕は、何か部活に入りたいとは思っていたものの、なかなか部活動中の先輩たちに声をかける勇気が出せずにいた。  でも、そんな中でずっと気になっていた存在が、文芸部だった。  別に読書が格別に好きというわけでもないし、創作なんてやろうとも思ったことなかったけれども、文芸部というと、何となくおとなしい人たちが集まっていそうなイメージがあったし、実際、部活動紹介のときの部長も、見た感じ優しそうな人だったから、自分でも何とかやっていけそうな気がしたのだ。  そして4月の半ば頃。  僕は意を決して、文芸部の扉をノックした。  文芸部は5人程度の小さな集まりで、僕が入部を希望する新入生であることを伝えると、温かく迎えてくれた。  部屋の中央にある机の上には、部員たちで持ち寄ったと思われるお菓子が置いてあったりして、そのアットホームな、落ち着いた雰囲気に、僕もだんだんと心が和らいでいた。だが、 「ちぃーっす、君、どこのクラス?」  1人だけ、明らかにこの空間に不釣り合いな男がいた。  髪の毛は真っ茶色、制服も第3ボタンまではずされ、堂々と大股開いて座っている。一言でいうと、なんかチャラい。 「俺も新入部員。名前は柴崎イツキ。クラスは3組。昨日からここに来てんだ、よろしく」 「は、はぁ…。ぼ、僕は1組の…黒井ミチル、です…」  僕は彼の存在に一抹の不安を抱きつつも、文芸部のメンバーとなったのだった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!