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僕に物を書く楽しみを教えてくれた人。
それは、高校の同級生である、イツキだった。
高校に入学したばかりの頃、周りに友人がいなくて引っ込み思案な性格だった僕は、何か部活に入りたいとは思っていたものの、なかなか部活動中の先輩たちに声をかける勇気が出せずにいた。
でも、そんな中でずっと気になっていた存在が、文芸部だった。
別に読書が格別に好きというわけでもないし、創作なんてやろうとも思ったことなかったけれども、文芸部というと、何となくおとなしい人たちが集まっていそうなイメージがあったし、実際、部活動紹介のときの部長も、見た感じ優しそうな人だったから、自分でも何とかやっていけそうな気がしたのだ。
そして4月の半ば頃。
僕は意を決して、文芸部の扉をノックした。
文芸部は5人程度の小さな集まりで、僕が入部を希望する新入生であることを伝えると、温かく迎えてくれた。
部屋の中央にある机の上には、部員たちで持ち寄ったと思われるお菓子が置いてあったりして、そのアットホームな、落ち着いた雰囲気に、僕もだんだんと心が和らいでいた。だが、
「ちぃーっす、君、どこのクラス?」
1人だけ、明らかにこの空間に不釣り合いな男がいた。
髪の毛は真っ茶色、制服も第3ボタンまではずされ、堂々と大股開いて座っている。一言でいうと、なんかチャラい。
「俺も新入部員。名前は柴崎イツキ。クラスは3組。昨日からここに来てんだ、よろしく」
「は、はぁ…。ぼ、僕は1組の…黒井ミチル、です…」
僕は彼の存在に一抹の不安を抱きつつも、文芸部のメンバーとなったのだった。
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