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序章~裏切り者へ~
"運命"と"愛"を信じられなくなった私へ。
どうして、こうなってしまったのでしょう。
どうしようもなく穢れ堕ちた"己"を最も憎むようになった私へ。
どうして、こんなことになってしまったのでしょう。
否、理由は訊かずとも明白だった。
"二人"の大切な人間を裏切ったから。
"二人"の心を弄び、愛を踏みにじったから。
一人を愛していながら――もう一人に恋した私の弱さは、あまりにも罪深くて醜い。
もう、苦しい、耐えられない。
なのに、愛しくて、恋しくて、焦がれてたまらないのだ。
「 」
苦しい、悲しい、愛しい。
それでも、私を呼ぶ優しい声に引き寄せられた恋しさに操られた私は振り返ってしまう。
決して私を責めようとはしない穏やかな微笑み。
こんな最低で醜い私を今も尚、真っ直ぐ見つめる優しい眼差し。
かえって私の胸に突き刺さるよう。
もう一度、今もこれからもずっと、”あの人”に抱きしめられたいという渇望を、もう自分では抑えきれない。
かつては"運命"と"永遠"を信じていた過去の私へ。
もしくは、"愛"を既に知った未来の私へ。
今、私はどうすればいいですか――?
***
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