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私の出会った美少年
小学校の入学式以来、なぜか私の横にいた隣りのクラスの美少女。
腕を組んで来て、いつもベッタリとくっついていた。
なぜ隣りのクラスなのに私を見つけると、くっついてくるのかはわからない。
学年全体で集まると、必ず寄って来た。
だから友達になる。
何の疑問も持たなかった。
肩まであるサラサラのストレートヘアで、ひときわ可愛らしい顔をしている。
気になるのは、いつも私の顔を覗き込んできて、見つめている事。
だからこちらもじっと観察した。
ものすごい美少女だけれど、小鼻がほんの少しだけ広がっていてなんだかサルに似ている。
そのちょっぴりサル顔の美少女がなぜ私をそんなに気に入っているのか、まとわり付いてくるのかわからなかった。
ある時私は「あなたって、可愛いよねぇ。こんなに可愛いい子見た事ないよ」と言っていた。
小学一年生だから、お世辞を使う程の処世術は身につけていないし、本心からそう言っている。
ところが、本人は全否定していた。
「自分は全然可愛くなんかないよ。あなたの方が可愛いいよ」
そう言いながら、なぜか身をくねらせていた。
しかも、ベッタリと私に貼り付きながら照れている。
「そんな事ないよ、本当にあなたの方が可愛いって」と私が言うと美少女はムキになって否定した。
「可愛いくなんかない!あなたの方が絶対可愛い」
「だけど私はこんな美少女見た事ないよ」とダメ押しした。
それは禁句だったようである。
「僕は美少女なんかじゃない。だって僕、男だもん!」と言われてしまった。
「え?男?」
「うん」
「え、でも髪も長くて可愛い顔で…」
「この髪は長い方がいいって、ママが」
「えーっ!男なのーっ!」
「そうだよ」
「やだーっ、女の子だと思って仲良くしてたのに。髪が長い男の子と手をつないでたの?気持ち悪い!」と発言して、べったりとくっついていた相手の腕を払いのけてしまった。
すると彼は「ひどいよーっ!」と泣きながら走り去って行ったのだった。
確かに、ひどい。
自分が勝手に美少女だと思い込んでいただけなのに。
その時初めて相手が男の子で、美少女ではなく美少年だった事に気が付いた。
そして彼が私にベタベタしていた事や、顔を見つめていた意味を悟る。
美少年を傷付けてしまい、深い罪悪感を抱きながら次の日に学校へ行ってみると、彼はもう隣りのクラスには見当たらなくなっていた。
私が小学二年になって転校するまでの間、一度も彼を見た事はない。
それから数年後、私は高校生になった。
学校は二年になると、文系クラスと理系クラスに分かれるようになって、文系クラスは校舎の1階、理系クラスは2階になった。
そして私は一年生の時の友達が理系クラスいたので、1階から2階の理系クラスへ休み時間に遊びに行くのが日課になる。
理系クラスは圧倒的に男子の多いクラスで、その中にひときわ美形のイケメン高校生がいた。
背が高く、サラサラのボブヘアのワンレングス。
当時人気絶頂だった江口洋介を真似ているのだろう、と思っていた。
あまりにもイケメンだから、つい見てしまう。
こちらがうっかり見てしまうから、相手もこちらを見る。
目が合った時に、なぜか彼をどこかで見た様な気がした。
この見つめ合う感じが初めてではない気がする。
少し小鼻が広がっているサル顔で、髪の長い男の子。
もしかして…
私は小学一年の時に出会った美少年を思い出したけれど、彼の名前を全く思い出せなかった。
だから確かめる事もできない。
けれど、お互いになんだかあの時の事を思い出している気がする。
なぜ、私のそばにはよくイケメンのロン毛がいるのだろう、と不思議に思っていた。
そう思ったけれど、だからと言って何もできない。
それなのに、私は話の流れで友達とこんな事を話してしまった。
「やっぱり男の人は髪が短い方がイイよね!」
それは個人の主観だけれど、あくまでも私の好みは短髪の爽やか好青年。
だから、長髪を批判するつもりはなかった。
ましてや彼を否定するつもりもない。
しまった!失言した、と思って彼の方を見るとバッチリと目が合っただけでなく、ショックを受けてひきつっている。
いやいや、そんなまさか、
たかだか別のクラスの女子が失言したくらいで、何も起きないだろうと思っていたのだが…
嫌な予感は的中した。
全くあの小学一年の時と同じ失言を繰り返した。
次の日、恐る恐る理系クラスへ行ってみると、あのロン毛イケメンは見当たらない。
まさか、あの時の美少年の様に不登校になってしまったのか、と一瞬血の気が引いた。
けれど、彼はいた。
なんと失言の次の日にはバリバリの短髪になって、爽やか美少年になって現れたのだった。
それを今さらながらにフト思い出して、私はこのリアル体験談を小説にして書いてみた。
すると、くだらない少女漫画の様な駄作が出来上がる。
だけどこんな彼が存在した。
このリアルの世界に、安っぽい少女漫画の様な彼は存在する。
綺麗な目をしていた。
女の子と間違えてしまうほど、綺麗な顔をしていた。
高い鼻をしていて、あんな美少年はその後テレビで見る芸能人意外には見た事もない。
なんで声をかけなかったのだろう。
あなたは、もしかしてあの小学校に通っていた彼ですか、と。
でもそれが判明したら、私は大罪者という事になってしまうかもしれない。
私は中学生になってからメガネをかける様になっていたから、おそらく彼にはわからなかったかもしれない。
でもたった1人で私の教室の前に立っている事もたびたび見かけた。
なんで私はあの人を避けていたのだろう。
ちゃんと確かめてみるべきだった。
そして言うべきだった。
「あの時は本当にごめん。許して欲しい」と。
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