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解体工
私は勤務地がプレハブ風の建物だった事がある。
そこを建てた大工さんの孫という大工さんが来た。
「ここ、相当古いですよ。ウチの親父じゃなくて、爺さんが建ててますからね」と言う非常に古い建物だった。
そしてそこに一見普通の水洗トイレがあって、そこの工事をする事になった。
と言っても、便座などの工事ではない。
なんと、ここの建物は水洗ではあるものの、浄化槽の付いた汲み取り式の水洗トイレだった。
何それ…
それで下水の配管などはあるので、地下から浄化槽のタンクを取り除く事になった。
ところが重機の入り込めない立地にあったので、人力で地下に埋設された浄化槽を撤去する事になる。
人力で浄化槽の撤去なんて、どうやるのかと思うだろう。
まさしく、スコップとツルハシと色々な工具を使って分解撤去だ。
浄化槽というのは、人間の糞便が溜まっていたタンクの事。
それを手で掘り返す。
少しずつ砕いて取り除く。
浄化槽の大きさは大体女性の背丈程あった。
イメージとしては地中からそのくらいの大きさのユニットバスを掘り返す感じだった。
おじさんがやって来た。
浄化槽の上部が見えて来たら、おじさんはそのタンクの中にすっぽり入り込んだ。
トンカントンカン、割る砕く叩く。
どうしても気になって私は近くまで行って、チラリと見てしまった。
おじさんは異臭の中、糞便の入っていたタンクに入っている。
もちろん全身すっぽりと。
私はほんのちょっぴり通りかかっただけなのに、夕方には吐き気と下痢で大変な事になった。
ひょっとしたら周辺にノロウイルスなどの飛散があったのかもしれない。
それであの全身すっぽり入って直接砕いていた、あのおじさんが大丈夫だったのか気になる。
一日がかりで1人のおじさんが浄化槽を取り除き、プレハブの浄化槽は撤去を完了した。
私は酷い吐き気のまま次の日出勤する。
世の中には強靭な肉体と精神力の人がいるものだ。
私はチラリと通りかかっただけで、死にかけた。
あのおじさんは今日もどこかで危険物の撤去工事をしているかもしれない。
でもそういう人がいなければ、成り立たない。
こうして日本は近代化してきた訳だし。
おじさん、ありがとうございます。
あなたは本当にすごい。
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