諒(7)

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諒(7)

 ミハルを近くにいた人に任せ、救急車に同乗した。  顔色は相変わらず悪いが、どうやらあのトラックに接触したわけではなさそうだとわかった。  倒れたのもおそらく事故を見たショックと、もともともっている貧血とめまいだろうと言われホッとした。  同時に美春とやっと話せるのだと思うと、うれしくてそわそわし始めた。  違う声、違う顔であっても美春に違いない。  何故美春が彼女の中にいるのかなんて、もうどうでもよかった。  貧血とめまいのための点滴が終わっても、美春は目を覚まさなかった。  意識が戻れば帰っていいらしいが、本当に大丈夫なのかと心配になる。  せっかくのチャンスなのに、話せないまま空に帰したくはない。  狭い病室の中を落ち着きなく往復し続けていた俺は、ようやくここでスマホが見当たらないことに気がついた。  ミハルを預けた人に連絡しなければと思ったのだが、どうやら事故現場に落としてきてしまったようだ。  美春のそばを離れたくなかったが、仕方なく公衆電話を探しに部屋を出た。
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