諒(8)

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諒(8)

 病室に戻ると美春がベッドに座っていた。  違う顔なのだが、笑顔がどうみても美春だった。  美春が彼女の中にいられるのは今日一日だけで、空に戻らなければいけないというから、急いで病院を出る手続きをした。    二人で街に出たが、美春の死の寸前にお互いの気持ちを知ったから、デートは初めてで緊張する。  とにかく放したかったので、美春が見つけた喫茶店に入ることにした。  声も違うが聞いているとやはり美春の話し方だ。  まさか話せるチャンスが訪れるとは思ってもいなかったので、聞きたいことがたくさんあるはずなのに何も考えられない。  空での話をたくさん聞かせてもらった。  地上での話もたっぷりした。  楽しい時間はあっという間にすぎていく。  びっくりしたのは、高三の時のしっぱい話を美春が知っていたことだ。  市原がミハルに話したのが美春に伝わったとしか考えられないが文句は言えない。  俺もたくさん聞いてるぞというと、美春の顔はまっ赤になった。  やはり美春はミハルの中ですべてを聞いていたのだ。
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