諒(9)

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諒(9)

 ミハルを預かってくれた人に連絡がとれ、美春と二人で迎えに行った。  携帯も預かってくれていたらしく助かった。  ミハルも特に異常はないようで、いつも通りの様子にホッとした。  十分なお礼をした後、また二人きりになった。  ミハルは先ほどまでそばにいたのに、今はまた行ってしまった。  もしかしたら気を使ってくれたのかもしれない。  別れの時間まであと二時間もない。  美春が行きたいところがあるというからついて行ってみた。  着いた先は高台にある公園で、街の景色が一望できる。  こんな場所があるなんて知らなかった。  そういえば今日は隣町のお祭りで花火も上がり始めた。  風に乗って甘いりんご飴の香りもしている。  中学の頃に美春と祭りに行ったのが懐かしく思い出される。  二人きりではなかったが楽しい時間だった。    もしも、からかわれたあの時に戻れるなら、その場で好きだと告白して、ずっとそばにいるのにと唇をかみしめる。
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