美春(9)

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美春(9)

 いよいよあと一五分で日が変わる。  私たちは事故があった近くまで戻ってきた。    なかなか空から連絡がなくて、私はそわそわしていた。  すべてが決まってからがいいと思って、まだ諒ちゃんに生まれ変わる話はしてない。  あと三分になってようやく空から連絡がきた。  希望はすべてかなったと聞き私は涙を浮かべた。  先生のところの子供に生まれ変われること。  それもまもなくだということ。  伝えたいけど、全部は言えないルールだ。  「諒ちゃん、次会うときにお願いがあるの。またすぐ会えるから、忘れずにまた会えたねって言ってね」  最後にそう言い残し私は空に帰った。  諒ちゃんがそう言ってくれたら、記憶が戻るというのが、今回のご褒美の一つだ。 奥底にしまい込まれた記憶を取り出せるかは、運だと言われていたから頼んだのだ。  生まれたばかりの我が子を見て、なぜかミハルを思い出した先生が、その子に海春と名付けるのは、もう少し先の話だ。
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